春の病 3 (ページ28)

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　ぐりぐりと後ろから痛いくらいに頭を肩に押し付けてくる松村くんに思わず笑みをこぼす。別にそれはサラサラの髪が擽ったいからではなくて。

「松村くん」
「んー」

　私のせいで落ち込ませているのに、ここまで落ち込んでくれていることに私は不謹慎ながら嬉しかった。
　先程まで情熱大陸が映っていたテレビも今は沈黙を保っている。黒い画面に映る自分の姿はなかなかにシュールだった。

「死のうと思ってたのは本当だよ」

　少なくともあの頃の私は当たり前にそれを選択肢に入れて生きていた。
　別にそれは世界に絶望した訳でも、生きるのが辛いわけでもなくて。

「『お芝居』以外の私に価値ってあるのかな？ってずっと思ってた」

　私の手を撫でていた松村くんの手がピクんとはねて、私の指に絡まる。

「でもね。ボロボロになった柚宇ちゃんを見て、生きなきゃな、って思ったのも本当」

　肩に押し付けられた頭に自分の頭をぐりぐりとくっつける。

「だけど、今はそれだけじゃないよ」

　肩から顔を上げた松村くんへ、画面越しに私は務めて穏やかに微笑む。

「松村くんが隣にいてくれるなら、生きている価値があるって思うよ」

　松村くんの方を向くと、ちゅと軽い音を立てながら唇が重なった。