春の病 3 (ページ21)

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泣き出してしまった私の手を引いて、松村くんはソファに座らせた。

「ご、ごめん氷織さん嫌だった？」

　相変わらず視界は滲んだままだった。松村くんが優しく拭ってくれるけど一向に止まる気配はない。

「嫌、だった訳じゃなくて」
「うん」

　キス自体が嫌だったわけでは決してなくて。ただ、その行為から発する自分の感情が嫌だったというか。
　なんて言えばいいのだろう。細心の注意を払わないと誤解されてしまう気がする。

「松村くんとのキスは嬉しいんだけど、今悩んでるというか感情が揺さぶられてることにドンピシャで」
「悩み？」
「ん。悩みというか、私のワガママなんだけどね」

　両腕を松村くんの首へと回されて、そのままギュと抱きつく。部屋着だから、申し訳ないけど顔を肩にぐりぐりと埋める。

「…俺には言えないこと？」
「…ごめんね」

　いっぱい甘やかして貰ってるのに肝心なことは何も言えなくて。ドラマの撮影もあって忙しいのにさ。
　そんな私の心を読んだみたいに、松村くんは優しく囁いた。

「俺がしたかっただけだから」
　