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次の日には、ヘラヘラと浮かれたAの様子は消え去り、作曲活動に取り掛かっていた。そこから切れることのない集中力のおかげで2日という短い期間で作曲までものにした。
そして、今日はレコーディング。いつもの場所でするのだが、ソワソワしたAの姿がそこにあった。
実は、今回のレコーディング風景を'' my all ''のPVで使おうという事になったのだ。
だか、その事は本人には知らせていない。変に意識してレコーディングが上手くいかなくなると…というスタッフ全員の意見が一致したからだ。
そのはずが、Aは控え室のソファに座っていたかと思いきや、ドア付近でウロウロしだしたり、置いてある本をペラペラと捲ったり…と、とにかく落ち着きのない態度の彼女に スタッフは苦笑い。
スタッフ「鈴原、準備はいいか？」
『…はい、』
スタッフ「ん？もしかして、緊張してる？笑」
『少しだけ…』
変わりない場所で、変わりないスタッフの声。
唯一変わっているのは、控え室のソファに当たり前のように座っている二つの影がないこと。
登坂やELLYに心内を打ち明けた日に、自分自身気付かされた 彼らがいるからこその三代目の鈴原A が影響しているのだろう。
『……(違う。私がここで一人歌うのは、彼らに届けるため。彼らに私の気持ちを伝えるためなんだ。大丈夫、私はもう一人じゃない。)』
Aは目を瞑り、深呼吸を一度した。
そして、パチッと瞼を開けた彼女の瞳は 真っ直ぐとガラス越しのスタッフを捕らえこう言った。
『…始めましょう。』
いざとなったら、やるのが鈴原A。
緊張感が張り詰めたスタジオ内に彼女は、ぶれない芯を見せつけた。
スタッフ「ああ、始めようか」
ピッ、
スタッフの合図と共に付けているヘッドフォンから自分で考え、どうしたら歌詞とマッチするか どうすれば伝えたい人達に届くか 悩みに悩んで作り出した最高の音が流れてきた。
そして、流れだした音に合わせ言葉を乗せる。
歌詞カードなど見ない。作ってはあるもののそれはスタッフ用でありA用のは存在しない。自分で作ったのだから、覚えていて当たり前なのだ、と。
ある歌詞の部分で、彼女の脳裏には沢山の人の笑顔が浮かんだ。
*
『〜♪……。っ、！』
歌い終わった後、自然と閉ざされていた瞼を上げた彼女の瞳からは一粒の涙が頬を伝った。
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作者名：宇宙人Ｐ | 作成日時：2015年2月2日 22時
