―ＨＡＮＤ―１▼０２ (ページ25)

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12月13日 PM6:00

都内では、至る所にイルミネーションで色づけられ、クリスマス間近を知らせている。

街中に行き交う人たちは、一年の最大イベントを目の前にそれぞれの弾むような気持ちを持ち合わせていることだろう

鈴原Aもまたその中の一人なのかもしれない。

緩いカーブのかかった瞳と同じ色の長い髪を左右に揺らし、息をあげ人波の中を走っている。

真っ黒のチェダーコートに身を包み、クリスマスという華やかな色はひとつも取り入れられていないスタイル。

行き交う人たちは、有名人の彼女が真冬の中息をあげ走っている、全身真っ黒の女の人とい色んな意味で彼女に視線を寄せていた。

*

大通りを走っていた彼女は薄暗い路地へと入っていった。

そこにあったのはネオンが光り輝く大人の雰囲気を醸し出している洒落たBAR。

Aとはかけ離れたそこに、彼女は慣れた様子で勢い良く木製の扉を開け店内に入っていった。

チリチリンーー

外の空気とは一風かわった空気が漂っていて、ゆったりとしたメロディのBGMが流れていた。

店内はレトロな雰囲気で、バーテンダーらしき紳士が、「いらっしゃいませ」と心地よい低い声でAへと言った。

彼女はそれに対応する事はなく店の奥の方へと足をすすめると、一番奥のカウンターに二人の見慣れた男性が肩を並べ座っていた

そっと彼らに近づき、彼らのうちの一人の肩をポンポンと叩いた。

『遅れてすいません。』

HIRO「うん、ここ座りな。…何か飲むかい？」

『いえ…、』

ATSUSHI「急かしてごめんね、外寒かったでしょ？」

『走って来たので、身体温まってますよ』

相手を気遣うような、ホワッとした笑顔をATSUSHIに向けた。

彼女が自分に気遣っている事に気づき、彼は眉を下げ困った表情を浮かべた。

HIROは二人の様子にフッと笑みを漏らしたかと思えば、

HIRO「…出来たのか？」

『ーーはい。』

そう言って彼女は、緊張した面持ちで手に持っているA4サイズほどの茶色い封筒から何枚かの紙を取り出した。

『……これが、私の想い』

薄暗い店内で、彼女の漆黒の瞳は映えていて。

数日前にみた彼女の瞳とは、少し違う明るみが灯っていることにATSUSHIは気がついた。

彼女の手からHIROへと渡されカウンターに置かれた、真っ白い紙には綺麗な字が中央にズラッと並べられている。

ATSUSHI「……'' my all ''か、」

ーー私のすべて。

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