―ＨＡＮＤ―１▼０２ (ページ23)

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登坂「おい、起きろ帰るぞ」

『スー…スー…』

そう登坂が声をかけた相手は、座布団２枚を有意に使い小さく縮こまって爆睡しているA。

かれこれ、5時間は経つ。

登坂「ダメだこれ起きねえよ」

ELLY「じゃあ、そのまま連れていくしかないね…」

綺麗に平らげられたお皿やグラスをテーブルの隅に重ね合わせ、簡単に片付けているELLYは登坂の呆れた声に苦笑いを零した。

登坂「…困った女、」

溜息のようにそう呟いた登坂だが、言葉とは裏腹に彼女を優しく抱き上げた。

ELLY「まあ、いっぱい泣いてたし、まだ俺ら2人だけだけど打ち解けれたことに少しだけ荷が降りたって感じなんじゃない？

それにさっきのAの笑顔みたでしょ？あんなに嬉しそうに心から笑っている笑顔、俺は初めてみた。」

*

まあまあ生意気な口調で、

『最高のソロにさせてみせます。』

と、決意を示した瞳を登坂 ELLYという順に見せたA。その彼女の言葉に、登坂とELLYは力強く頷いた。

ELLY「揺るぎない決心を持ったんだね。その決心とは、俺たちメンバーへの決意……、なんだよね？」

『はい…！』

登坂「そか。

こうして、お前と話ができてよかったよ。」

『そうですね、…もしかしたら私ずっとそう思ってたのかもしれない。』

登坂「ん？」

『私、挨拶だけでも繋がりを持っていたかったのかな、って。

返ってくることのない挨拶を分かっていてするなんて、私らしくなかったのに。それでも挨拶は毎日欠かさずしてきたのって小さなきっかけが欲しかったのかな…』

まあ、ヒロさんの言葉を信じていたと言う事なんだろうけど。

思い返してみれば、挨拶を一度も怠らなかったA。

朝がすごく苦手で誰とも会話したくないほどなのに、挨拶だけは目を無理やり開けてまで必ずしていた。

『…私、すんごい好きなんだね…』

ーみんなのこと。

デレっとしたような笑顔で、恥ずかしそうに言ったAは今までのツンケンしていた印象がひっくり返るほどで。

彼らに初めてみせた、彼らのための笑顔だった。

*

登坂「…あれって、ELLYが引き出したんじゃねえ？」

ELLY「え…そうかな？」

登坂「いやだって、今日 Aと話し合おうって言い出したのELLYだろ？それに、ELLYは誰よりも先にAに寄り添おうとしてたし。」

ELLY「そうかな。…なんか、照れるね」

彼女の寝顔を横目に彼らは笑い合った。
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近くて遠い彼ら編完