【文スト】公園に佇む羊さん【中原中也】

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「よおA！」

すっかり私の中で中也くんの定位置になったような公園のベンチに、彼は座って片腕をこちらにあげる。

「今日は帰るの遅かったな」

「ごめん。ちょっと寄り道してた」

「ふーん」

聞いてきた割には興味無さげに返事を返される。

「中也くんに渡したいものがあって」

「俺？」

そう言うと彼は首を傾げて手を差し出す。

差し出された手のひらにそれを置いた。

「……鍵？」

「そう。私の家の鍵」

合鍵を作ってもらってたから遅くなったの。ごめんね。

そう言えばとたんに表情が明るくなる彼。

「大切にするわ」

「これでいつでも帰ってきていいよ」

「おう」

肩を並べて帰路を歩き、家に着いていつもどおり鍵を開けようとすれば彼が自分が開けたい、と手を止められた。

彼が鍵を差し込み回すと、カチャリと音がした。

「おお……。開いた」

そう言って玄関を開けて中に入り、続いて私も入った。

「お帰り。中也くん」

「只今」

いつも1人だったからお帰りと只今が言えるっていいなと、私もちょっと幸せに浸ってたら彼も同じ事を思ってたらしく、「お帰りって言われんのいいな」と言っていた。

「いつかは同じ家に住もうな！」

加えて嬉しい約束までされた。

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