天界からの救世主35＿＿＿異色な孤独龍の追憶【オリジナル】【過去編】 (ページ45)

今日:32 hit、昨日:6 hit、合計:5,869 hit

黒い光、すっきりしたいページ45

願い事を願った瞬間、目の前は真っ黒になった。だが矛盾しているように眩しい。
瞼を閉じていても分かるような眩い光がAを包んだ。

『っ、(黒い光…！？)』

光の種類として黒というのは見たことが無い。だが、存在はする。不吉な意味を持つ光として存在する。

Aは願いを叶えるという夢のような効力を持つオラシオンから、その光が出ることにとても驚いた。

『(願い事ってのは不吉なのか、！？)』

内心下唇を噛んで悔しんだ。

だがその瞼越しでも目が眩むような黒い光も程なくして消え、そろりと視界を開けると、Aの眼の前にあったオラシオン挿してあった花瓶を残して跡形もなく消えた。塵も残さず。

『…伝承は、本当…ってか…はぁ…』

……、何だろう。ドッと疲れた。
異常に怠い身体を座り心地の良い椅子に沈ませ、天井を仰ぐ。

…あの願い事が本当にうまく作用してくれるのか、それは今はまだ分からない。

効力が発揮するまで、どれくらいの時間を要するのかも不明。

効力の持続も不明。

我ながら無防備な賭けに挑んだな、と思う。

『…明日一応確認して、亜央も呼んで…』

そこで彼の意識は途絶えた。

【「……」】

誰もいないはずのAの執務室で、気配も生気も全く感じられない誰かが彼の様子を伺っていたことなど、知らない。

――――願い事はつまり、誰かの欲望。そしてそれは誰かの不幸となる可能性がとても高い。

――――光あるところには影があり、光が強いほどに、影は濃くなる。

――――故に、【黒い光】なのだ。

――――そしてその願いがどう転ぶかは、世界の天秤次第である。

零「おはようございます…大丈夫ですか？椅子なんかで寝て」

『…あ？』

翌日Aは自室で零に揺すられ起こされた。ベッドではなく、何故か椅子で寝ていたようだ。良い椅子だとしても、ずっと変な体勢で寝ていたせいか、腰も肩もバキバキだ。

『…あのまま寝てたのか…？』

信じられない気持ちで少々心配しています感を出している零の顔を見た。
オラシオンへ願い事をしたあとの記憶が無い。確か体の怠さを漢字でそれで…。

『え、…普通に恐怖だな…』

零「？」

『いや、なんでもない。じゃあ昨日言った通り、亜央を俺の執務室に連れてきてくれ。その間に支度する』

よく分からないが、取り敢えず顔を洗ってすっきりしたい。