源氏の兄の旦那様

静かな忠告 ページ33

side一期

A殿と髭切殿が仲直りして何日だろうか

私はたまたまA殿と内番が重なった
最初こそA殿も私も馬小屋の掃除をしていたが、不意にA殿は私に言った

“髭切を抱いたのか”..と
......それはとても静かな声で..

「..」

箒を持った状態で其方を向けば
A殿は酷く冷たい視線を寄越していた

「何故..今？」

『ずっと言いたかったのだが..中々に時間が無くてな』

「...へぇ、別に私は何もしておりませんよ」

嘘だ
だがここで真実を言えばどうなるか..

『..』

A殿はしかし、しばらく私を見据えていた
そしておもむろに箒を立てかけ歩んでくる




あまりの威圧に思わず後退すると
壁際まで追い詰められ、手で逃げ場を防がれた
いわゆる...壁ドンですな









『よもや俺から嫁を取ろうなどと思うなよ』









低い、冷たい声がA殿から発せられる









『手出ししたならば胴体と首は...かの主達の如く、接する事は無かろうなぁ』









目元を歪め笑顔を浮かべたA殿だったが
私は恐怖からか、ピクリとも動けなかった



『...さて、馬当番を再開するか』



そんな私をしばらく見据えていたA殿は
ぱっと私から離れると何時もの調子で言う



『早く終わらせて、弟達か彼奴に癒してもらわねば』




箒を取る為に踵を返したA殿
恐怖からやっと解放され、汗を拭って視線を其方
へ追わせるとA殿は唐突に足を止めて言った









『あぁ..そうだ』









反射的に身構え、次の言葉を待っていると
A殿は自分の鎖骨辺りを露わにして私に
流し目を送る









『彼奴に付いていた痕は俺が消してやった...アレは俺にしか啼かぬし..俺にしか痕はつけぬよ』









そして、ニヤリと笑って言ったのだった

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