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第2話 神子の舞 ページ8

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––人が多いところには、また鬼もいる

人混みでごった返す浅草––今宵はお祭りが開かれているため、観光客が大勢訪れていた。

親子のような––男女2人が、私の隣をスッと通る。
ちらりと背後に目を向ければ、少年は––母であろう女性のことを様付けで呼んでいた。それに対し、穏やかな表情で受け答えをする母––。

「あっ、すみませ…」

よそ見していたせいか人にぶつかり、人ごみの中に流れてしまう。また後ろを振り向いた時、そこにはもう2人の姿は無かった。



シャランシャランと響く神楽鈴。ドンドンと地鳴りする和太鼓の音。ピロピロと聞こえる横笛。
神社の中にある大きな能舞台には、巫女装束を身につけて顔を金縁に彩られた赤布を巻いている"神子(みこ)"たちが舞っていた。

大勢の観客の中には、件の鬼殺隊員––3人組がいる。

「(…あの3人も来てたんだ…)」

そんなことをぼんやり考えながら、私はただ無心で神子の舞を踊った。何もかもが鮮明に見える、視野の広い世界の中で。

長時間も舞を踊るのは苦ではない。何故なら、それは我が家の存続において重要なことだったから。私が舞を踊らなければ––。

鈴や太鼓、横笛の音が一斉に止む。赤い提灯が灯る神社全体が糸を張ったようにピンと静かになった。

誰もが、思わず呼吸を止めてしまうほどの静寂。
私は、この瞬間がものすごく好きだ。余韻を残す、この一瞬が。

パチパチと拍手の音が響く。その音を聞いた私たちは短く息を吸い込み、長く息を吐く。肺の中にある空気は、ごくわずかなのに。何故か、長く息を吐ける。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎 , 我妻善逸   
作品ジャンル:アニメ
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こっちん - 夢主ちゃんが、フジザクラの呼吸が使えるかもしれないということが出てきて、さらに、希少な稀血に前世の記憶があり?というのがあって、夢主ちゃんの正体はなんなのか、続きが気になって仕方がありません!!!更新、頑張って進めてください!!!待っています!!! (2019年8月24日 21時) (レス) id: e1802d5515 (このIDを非表示/違反報告)
SORA(プロフ) - あいうえおさん» 誤字のご指摘ありがとうございますT T (2019年7月28日 22時) (レス) id: 04a1197c90 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - 「宇随」ではなく「宇髄」ですよ。 (2019年7月28日 21時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:3939462xx | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx  
作成日時:2019年7月23日 8時

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