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鬼たちが一斉に私を狙う。
その瞬間、独特の呼吸音と駆け足が聞こえてきた。
刹那、鬼たちの頸が辺りを舞う。朧月の霞む薄暗い闇に、鉄臭い雨が降ってきた。
「…無事か?」
長い黒髪。花札のような−耳飾り。落ち着いた声音。
私は、小さな声で頷く他なかった。
「…その服装−神職か。
−怪我がひどい。それじゃあ、また鬼たちが来る。こちらへ」
「は、はい…!」
*
サラシでぐるぐる巻きにされた私。思っていた以上に切り傷がひどく、サラシの上からじんわりと血が滲み出してきた。
「稀血の者−。護身用に、技を覚えておくと良い」
耳飾りの剣士−は、私にそう言うと小太刀を渡す。それは神職で使うものではなく、本物の−刀だった。
ただ、耳飾りの剣士が教える護身術はどれも少し−息苦しい。だから私は、独自の呼吸法を編み出した。フジザクラの舞を踊る時に使う息遣いなら、武闘に苦手な私でも順応できる。
私はこれを、フジザクラの息遣いと名付けた。耳飾りの剣士の呼吸とは全く違う、別の呼吸法。
でも、技は一つしかない。否、一つしか作れなかった。
「鬼の頸を斬ることはできても−技を繰り出すことはできないのか…」
そう言った耳飾りの剣士は、少し悲しそうな声を出した。
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こっちん - 夢主ちゃんが、フジザクラの呼吸が使えるかもしれないということが出てきて、さらに、希少な稀血に前世の記憶があり?というのがあって、夢主ちゃんの正体はなんなのか、続きが気になって仕方がありません!!!更新、頑張って進めてください!!!待っています!!! (2019年8月24日 21時) (レス) id: e1802d5515 (このIDを非表示/違反報告)
SORA(プロフ) - あいうえおさん» 誤字のご指摘ありがとうございますT T (2019年7月28日 22時) (レス) id: 04a1197c90 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - 「宇随」ではなく「宇髄」ですよ。 (2019年7月28日 21時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:3939462xx | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2019年7月23日 8時