フジザクラの息遣い

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お館様のお屋敷が見える。私は、しのぶさんを始め––柱の皆さんにこのことを伝えた方が良いと考えた。

その瞬間、大きな轟音と燃え上がる炎が辺りを包み込む。私は驚きのあまり、立ち尽くしてしまった。

「(な、なんで…お館様––！！！)」

自分の意思なのか––記憶の遺伝かは分からない。でも、私の足は––これ以上に無いほどの速さで駆け寄って行った。

「カァー！待テ！藤木A、待テ！」

駆け足の私に声をかけたのは、誰かの鎹鴉。その鴉の首には、1枚の紙が掛けられていた。目のような模様が描かれた、1枚の紙。

カラスは、それを私のおデコにくっつけると一声鳴いてスゥーっと消えていく。
今はとにかく––お館様のところへ、向かわなければ。

＊

そこはまさに地獄だった。
お屋敷は焼け焦げ、つい先日まで綺麗に整えられていた庭は荒らされている。何より––"誰かのいた痕跡"が残っていた。

「うっ…」

漂う––悪臭。目を開けば、ポロポロと涙が出そう。
目を開けて歩かなかったせいか分からないけど––私は、床にあった障子の中に吸い込まれてしまった。

深いところまで落ちる感覚。不思議と怖さは無くて、妙に––冷静だった。

床に叩きつけられる直前。
私は空中で身をひねり、落下の勢いをころして静かに床へ降り立った。

第9話 呼び起せ→← しのぶside

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