09:「球技大会・始動」 ページ10
「九鬼さん、左手出して!」
私は救急箱を片手に急いで九鬼さんをベンチに座らせる。
なんだなんだというガヤを無視して、救護席から氷を持ってくるよう後輩に指示を出す。九鬼さんの中指は少し腫れていた。突き指だ。
「い、痛くないから大丈夫やで!」
「いや、痛いでしょ……」
早く気付けなかった自分が不甲斐無い。後輩にお礼を言って、受け取った氷嚢をその指に当てた。
「これで多分大丈夫、まだ早い段階だし……すぐ治るよ」
「ありがとう」
しかし。
「……正直言うてええ?」
額を抑えたユカリちゃんが、呻いた。
「こっから逆転できると思う?ブロックが抜けて……」
「アウェーだし……あー……無理、怖い……」
私は、噛み締めていた奥歯を解く。
治君と目が合って、そして頷く。
「―――大丈夫、だと思う」
え?と、全員が私を見た。
「まず、皆に謝りたいです。……ごめんなさい、私、バレー経験者なのに黙ってました」
本当にごめん、と頭を下げると、その頭をユカリちゃんにバシっと叩かれた。いて!と顔を上げると、爆笑している。見回せば、皆笑っていた。え、何で。
「そんなん分かるに決まっとるやろ!!あの男バレでやれとる義仲やで!?それに、練習のサーブ見て分からんアホはおらんわ!!もー!!何謝りよんかと思った、ビビらさんで!!」
「てっきり『実は二組のスパイやった』とか言うんかと思たわ!」
「え、え?!」
ユカリちゃんはゲラゲラ笑った。城田さんも、久慈さんも九鬼さんも、高橋さんも、秋葉さんも。
え、もしかしてこれ、私が思い詰めていただけ?だとしたらすごく恥ずかしいのですが。
すごく優しい顔でユカリちゃんは私をびしっと指さす。
「Aはアタシたちにバレーを楽しんでもらいたいからサポメンに入ってくれたんやろ?やったらさ」
―――大逆転して、アタシらに「バレーのすごさ」見せてや。
自然と笑みが浮かぶ。アレ、これ笑みじゃない?まあいいや。
「……うん。見せてあげる」
傲慢にも思える言葉は自信だ。自分に対する信頼だ。
周りの喧騒を無視して、私達は円陣を組む。勿論、九鬼さんも一緒に。
「まずは監督から一言。今まで、六人でよく勝ち抜きました」
そして、と続ける。
「今からは、七人で。目に物見せてやるぞ!!!」
「おーーー!!!」
重ねた手を天に向かって突き上げた。
さぁ、決勝戦。
3セット目だ。
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藤浪(プロフ) - akneさん» 2回目のコメントありがとうございます!!笑!テンションが上がったようでなによりです!臣くんは書いていてとっても楽しいので、ちょくちょく出てきてもらいたいなと思ったり……!更新頑張りますね〜!! (2021年5月6日 19時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
akne(プロフ) - 2回目のコメント失礼します!臣くんきたーーーーー!!臣くんの登場によりテンションが上がっております!好きです!更新頑張ってください! (2021年5月6日 0時) (レス) id: b4edb87e83 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - コメントありがとうございます!面白くて大好きだなんて……はい!楽しんで更新して参りますので、どうぞよろしくお願いします!! (2021年5月4日 7時) (レス) id: a6c7f148a0 (このIDを非表示/違反報告)
umisorako - この作品面白くて大好きです!続き楽しみです (2021年5月3日 11時) (レス) id: 7e05f36517 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - akneさん» 嬉しいコメントをありがとうございます!嬉しくてニヤニヤしております(笑)若利君を語るならば、臣くんは外せませんよね……!ぜひぜひ今後の展開をお楽しみに!更新頑張ります〜! (2021年5月2日 16時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤浪 | 作成日時:2021年5月1日 22時