34:「ルーティンワーク」 ページ39
IH直前合宿は、学校で行われる。
合宿と言っても小規模、短期のもので、私なんかは家が近いので学校に泊らず帰宅する。稲高男バレの合宿は夏休み後半に合宿所で行う方がメインになるから、私としてはそっちの方が大変である。
自転車で最寄りのスーパーを往復。料理と洗濯、それからデータ集め。
選手じゃないからこそ、元選手だからこそ、サポート出来る事っていくらでもある。
コートは私の戦場ではないけれど、コートの外は私の戦場だ。
なーんて、カッコいい事を考えながら自転車を漕いだ。
「Aちゃん!」
前かごにも後ろの荷台にも荷物一杯。ひぃひぃと自転車を漕いでいた足を止める。
「おー、華ちゃん」
正門から体操服で駆け寄って来たのは、チア部の三沢さん。一年の頃はちょっといざこざがあったけど、今や仲良しだ。前にチアの大会は冬って言ってたけど、夏もハードに練習があるらしい。いやはや運動部も文化部も、夏は大変だ。
華ちゃんは、私が荷物にまみれている様子を上から下まで見て「おぉ」と呟いた。それからグッと親指を立てる。
「改めて、インハイ頑張ってね。コートから離れとるけど、熱烈にAちゃん応援するから」
「そこは私と見せかけて、尾白さんでしょ」
「んもー!やめて!照れる!」
尾白さん推しの華ちゃんは、ぽぽぽ、と頬を赤く染めた。私はにやにや笑いながら汗を拭う。
あ、そういえばさ。と華ちゃんが何かを思い出したように声を潜める。え、なになに。とドキドキしながら耳を傾けた。
「あのミャーツムのぐってヤツ、めっちゃタイミング難しいんよね」
華ちゃんが真顔で言うものだから思わず吹き出す。
アレだ。侑君のサーブの時の、ぐっ、ってやつ。これ、実は吹奏楽の友達にも言われたことがある。でもね。とそういう時は大抵続けるのだ。
「あれが侑君のルーティンだから」
「ルーティン?」
「サーブを打つ前にアレをすると、集中できるんだって」
「んー……なんか分かる気するわ」
じゃあ、私らも頑張って合わせる!と華ちゃんはニっと笑った。少しばかり立ち話をして別れる。
ルーティンは、要は習慣だ。ソレをすることでいつもの精神状態を作り上げるための。まぁ、侑君のアレはまだ「ルーティン」じゃないのかもしれないけれど。
本人に言うつもりはないけど、こうして侑君のあのド派手な演出をさりげなく守っているのは私だったりするのであった。
これが縁の下の力持ちってやつである。え、違うって?
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藤浪(プロフ) - akneさん» 2回目のコメントありがとうございます!!笑!テンションが上がったようでなによりです!臣くんは書いていてとっても楽しいので、ちょくちょく出てきてもらいたいなと思ったり……!更新頑張りますね〜!! (2021年5月6日 19時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
akne(プロフ) - 2回目のコメント失礼します!臣くんきたーーーーー!!臣くんの登場によりテンションが上がっております!好きです!更新頑張ってください! (2021年5月6日 0時) (レス) id: b4edb87e83 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - コメントありがとうございます!面白くて大好きだなんて……はい!楽しんで更新して参りますので、どうぞよろしくお願いします!! (2021年5月4日 7時) (レス) id: a6c7f148a0 (このIDを非表示/違反報告)
umisorako - この作品面白くて大好きです!続き楽しみです (2021年5月3日 11時) (レス) id: 7e05f36517 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - akneさん» 嬉しいコメントをありがとうございます!嬉しくてニヤニヤしております(笑)若利君を語るならば、臣くんは外せませんよね……!ぜひぜひ今後の展開をお楽しみに!更新頑張ります〜! (2021年5月2日 16時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤浪 | 作成日時:2021年5月1日 22時