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20:「どっちが大事!?」 ページ25

最初は適当に流した。

 どうせ話題なんて最初から無いのだ。そのまま静かに退出しようとした私を阻んだのは、義理の弟と妹であった。
 ……八歳の弟と、五歳の妹。この二人は、否、妹は母親と再婚相手の子である。

「お母さん、この人……」
「だれー?」
「親戚のお姉ちゃんだよ」

 男とその息子がへらへらと子供達を宥めるのをボーッと見ていると、母親が不安そうに私を上目遣いで見た。

「A、大丈夫?」
「はい」

 別に親戚呼びは構わないし、寧ろそうしてくれ、と思っていたのだが、それよりなによりバスの時間である。最終便を取ったのでそこまで心配しなくとも良いはずだが、念には念を。会話を切り上げてとっとと去ろうとしていた。
 そこに爆弾をぶっこんで来たのが母親である。
 まるで名案!とでも言いたげに私の手を握る。柔らかい手だな、と、そう思った。

「バスはキャンセルして、今晩はうちに泊ったらどうかしら!親睦を深められるかもしれないわ!」
「……いえ、遠慮しておきます」
「どうして?夏休みでしょう?」
「部活があるので」



「ッ!私より部活の方が大事なの!?」




 ……こ、これは、以前侑君が言っていた『めんどくさい女』……!

  ちなみに侑君はこの質問をされるともれなく「お前よりバレーに決まっとるやろが……付け上がんなよクソブタ……」とブチギレるらしい(治君曰く)のでご注意を。
 そして、それに対して「血気盛んだなぁ」とか何とか言っていた私ではあるが、見事にキレた。見事に。
 思わず母親を睨む。否、身長差からして見下ろすだけで睨んでいるみたいになるのはずるい。


「はい。血の繋がった赤の他人より、私には部活の方が大事です」


 いやー、あの瞬間の空気の凍り付き方。
 必死にブロックに跳んでいる間にツーで落とした時みたいな空気感。

「部活って何よ!バレーが何なのよ!」
「たかが部活に何必死になってんだよ」
「その言い方は無いだろう……」
「折角、資金援助でもしてあげようと思ったのに!」

 時間差じゃないけど、私は二度目のキレを体感した。頭の中が真っ白になる感じ。
 まるで私と父の生活を馬鹿にしたような言葉に、気付けば声を上げていた。

「資金援助なんて必要ありません。私と父は、今の生活で満足しています……たとえ『母親』がいなくても、私には打ち込めるものがあるので、お気遣いは無用ですから」

 それじゃあ、と母親の手を振り解いて葬儀場を後にした。

 ……日没へ近づく日差しが、いやに激しかった。

21:「迷子の迷子のJKです」→←19:「ピンチ!ピンチ!?ピンチ!!」



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藤浪(プロフ) - akneさん» 2回目のコメントありがとうございます!!笑!テンションが上がったようでなによりです!臣くんは書いていてとっても楽しいので、ちょくちょく出てきてもらいたいなと思ったり……!更新頑張りますね〜!! (2021年5月6日 19時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
akne(プロフ) - 2回目のコメント失礼します!臣くんきたーーーーー!!臣くんの登場によりテンションが上がっております!好きです!更新頑張ってください! (2021年5月6日 0時) (レス) id: b4edb87e83 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - コメントありがとうございます!面白くて大好きだなんて……はい!楽しんで更新して参りますので、どうぞよろしくお願いします!! (2021年5月4日 7時) (レス) id: a6c7f148a0 (このIDを非表示/違反報告)
umisorako - この作品面白くて大好きです!続き楽しみです (2021年5月3日 11時) (レス) id: 7e05f36517 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - akneさん» 嬉しいコメントをありがとうございます!嬉しくてニヤニヤしております(笑)若利君を語るならば、臣くんは外せませんよね……!ぜひぜひ今後の展開をお楽しみに!更新頑張ります〜! (2021年5月2日 16時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤浪 | 作成日時:2021年5月1日 22時

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