‖:「四年前の春」 ページ17
―――四年前、宮城県。
『青春ほど死の翳を負い、死と背中合わせな時期は無い』
だなんて言った作家が誰だったかは忘れたけれど、四年前。中学校に入学したての私はひどく荒んでいたのだ。
……小学六年生の春に、両親が離婚した。
理由は人に語っても笑われそうなものである。
お嬢様育ちの母が、私の父ではない別の男との間に子供を作っていたのだ。
この話の恐ろしい所は、父と私を裏切った母がその腹に『こども』を宿したまま、私達と共に笑顔で暮らしていたという事。勿論、父は途中から気付いていたのだと思う。それでも黙っていたのは、まだやりなおせるかもしれないという淡い期待を抱いていたからなのだろうけど。
でも、母は私達を捨ててお腹の子の父親と再婚した。
若手の実業家で、大層なお金持ちだと聞く。だからなんだって話ではある。
私は迷わず父について行く事を選んだ。弟は母が連れて行った。母の再婚相手には、一個年上の男の子がいると聞いたし、へらへらと軽薄に笑って私達を騙していたあの女の顔を見るのすら嫌だった。
そして、タイミング良く舞い込んで来た転勤の話に乗って、親子二人で東京から宮城に渡った。その後から今まで、ずっと。まるで自分が好きでも無い男との間に私を作ってしまった、みたいな被害者面をしたあの女の存在は私の心に暗く深い翳を落としたのである。
故に、私は他人と関わるのが酷く恐ろしかった。
でも、部活には入らないといけない。
自分で見学に行くのは避けたい。
そんな時に、私の高身長と元来の足の速さに注目してスカウトして来たのが『白鳥沢学園中学校、女子バレーボール部』の顧問であった。
……私は、別に最初からバレーが大好きってわけでは無かったのだ。
むしろ、嫌いだった。
入ってみたは良いが、なにせ周りは皆、元々バレーをしていた人ばかり。私は生まれて初めてボールを触ったばかりの一握りの落ち零れで、愛想も良くないし、先輩達にも嫌われていたのだと思う。
故に体育館での練習に参加させてもらえない日々が長く続いた。
県下では強豪と名高い白鳥沢の、その中での落ち零れ。
バレーボールなんて嫌いだった。ひたすら外周ばかり、こんなもんなら陸上部にでも入った方が良かったと思ったし、ボールを打つことの何が楽しいのか全く分からなかった。
いろんな意味で荒んでいたあの初夏。
私は『牛島若利』に出会ったのだ。
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藤浪(プロフ) - akneさん» 2回目のコメントありがとうございます！！笑！テンションが上がったようでなによりです！臣くんは書いていてとっても楽しいので、ちょくちょく出てきてもらいたいなと思ったり……！更新頑張りますね〜！！ (2021年5月6日 19時) (
レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
akne(プロフ) - 2回目のコメント失礼します！臣くんきたーーーーー！！臣くんの登場によりテンションが上がっております！好きです！更新頑張ってください！ (2021年5月6日 0時) (レス) id: b4edb87e83 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - コメントありがとうございます！面白くて大好きだなんて……はい！楽しんで更新して参りますので、どうぞよろしくお願いします！！ (2021年5月4日 7時) (レス) id: a6c7f148a0 (このIDを非表示/違反報告)
umisorako - この作品面白くて大好きです！続き楽しみです (2021年5月3日 11時) (レス) id: 7e05f36517 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - akneさん» 嬉しいコメントをありがとうございます！嬉しくてニヤニヤしております（笑）若利君を語るならば、臣くんは外せませんよね……！ぜひぜひ今後の展開をお楽しみに！更新頑張ります〜！ (2021年5月2日 16時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤浪 | 作成日時：2021年5月1日 22時
