06【狐が二匹】 ページ8
そして冒頭に戻る。
私の目の前には、狡猾そうな青年が二人。しかも何のオプションかもっふもふの猫耳……否、ちょっと違うかな？けど耳に毛が生えている。
尻尾と思わしきモッフモフの毛の束もお尻の方から生えていて、いや、これは付け尻尾という奴だろうか。うーん、夢か幻か。そういう性癖の男の子たちかもしれない。もしくはコスプレ？分からないけど、あの異形から助けてくれたのは確かだから、私は余計な事を言いそうになる口を閉ざした。
「いつまで這いつくばっとるん？」
「キキカンっちゅーもんが欠如しとるやろコイツ」
「せやなぁ、ツム」
「やろ、サム」
顔の良く似た二人は、私の前にしゃがんだ。
右は銀色左は金色、髪の分け目が左右逆。
北さんのような袴を履いた青年達が私を見た。
「なぁ、自分……名前は？」
「ぐぇ」
金髪の方が、私の顎を掴む。ヤバい、変な方向に首が曲がりそう。
息苦しくて細めていた目を開くと、金色に輝く眼と目が合った。その瞬間に、体が凍り付いたように身動きが取れなくなる。
じわじわと締め付けられるような、拘束されているような感覚がして、苦しい。
「あ、ぇ……？」
金色の眼がすっと細められた。
舌先さえ動かなくなって、拙い言葉が零れ落ちる。
「さぁ……く、さ……」
「うんうん、サクサの女やんなぁ」
「その続きは？」
「ぁ……ぅ……」
思考回路に靄がかかったような、そんな感覚に襲われて、言われるがままに自分の名前を口に出そうと回らない舌を動かそうとしたその時であった。
「侑！！！治！！！！やめろ！！！」
ここ一週間、聞き慣れた人の声が「キン！」と響いた。その声によって体の戒めが解けていくような、そんな感覚と共に、顔から石畳にべちゃりと落ちる。
うぅ、と呻きながら身を起こすと、あの青年達は霞のように消えていた。
その代わりに。
「キャオン！」
「クゥウウン……」
「お前らはその姿で反省や。飯も抜き」
「ぎゃあおおおん！！」
北さんの両手から、金と銀の毛がふさふさとした狐がぶら下がっていた。首根っこを掴まれた二匹は「ごめんなさい〜！」「うわ〜！」とでも言っているんじゃないかな、と考えてしまうような鳴き声を上げている。
「大丈夫か、サクサ。頭の方は？」
「え、あ、はい、大丈夫……だと思います……？」
狐って、そんな鳴き方するんですね。と言えば、北さんは明らかに呆れた顔になったのであった。
【狐が二匹】
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藤浪(プロフ) - merisuさん» 初めまして！とても面白いだなんて……ありがとうございます！ぼちぼち書いていきますので、どうぞのんびり更新をお待ちください……！ (2021年8月20日 20時) (
レス) id: a6c7f148a0 (このIDを非表示/違反報告)
バボ - はじめまして！！一気読みしました！！いやぁ、侑君と治君めちゃくちゃかっこいいし、可愛いですね！とても面白かったです！！続き待ってます。頑張ってください！ (2021年8月19日 22時) (レス) id: f5aeefa10b (このIDを非表示/違反報告)
merisu(プロフ) - はじめまして。とても面白い作品をありがとうございます！！続きを楽しみに待っています(^^)更新頑張ってください！！ (2021年8月19日 19時) (レス) id: bbb64c35b8 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - mioさん» はじめまして！嬉しいお言葉、ありがとうございます。もふもふいいですよね、もふもふ……。聖臣くんを書くのもとても楽しみなので、のんびりご覧いただければ幸いです！！ (2021年8月8日 6時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 初めまして。とても面白かったです！もふもふ触りたい……。聖臣くん登場するのも楽しみにしております (2021年8月6日 20時) (レス) id: e44c41366c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤浪 | 作成日時：2021年4月28日 22時
