【HQ!!】狐憑きのサクサさん【呪術廻戦】

29【酷い目に遭う】 ページ31

酷い目に遭った。

　もう、呪霊うんぬんは元々酷い物だって分かってるので良いのだ。
　そうじゃなくって、酷いのは北さんのお説教である。


〇


　あの後。治に担がれて、トラロープ頼りに地上に戻った私達を待っていたのは「おかえりー」と言う角名だけではなかった。


「サクサ。吸われたんやな」


　静かな声に、なにを？と聞き返す程鈍くは無い。片手に赤い提灯を持った北さんの背筋が凍る程の無表情に、私と治は震え上がる。ついでに「いやー久しぶりのこの大きさは、加減難しいなぁ！」とか言いながら上機嫌に後を追うように飛び出してきた侑も凍り付いた。角名もついでに私達の後ろに隠れる。
「まとめて説教や」
　その言葉で我々はある種の覚悟を決めたのであった。


〇

「口吸いは魂吸いと同義や。ケモノは主の魂を吸うことで、その力を底上げすることが出来んねん。ただし、吸われ過ぎると主は死ぬ」

「死なないって言ったじゃん！」
「まぁ、言葉のアヤっちゅーやっちゃな」
「ノリ軽ッ」

　侑、私、治、角名の順番で稲荷崎神社の社務所のちゃぶ台の前に並んで座って既に夜の九時を回った所。古井戸からここまでは体感時間にして数十秒、ケモノの二匹(二人)に担がれて帰れば速いものである。というか速すぎて怖かったし。
「あの、呪力ってのは負のエネルギーって前教えてもらったんですけど、つまり私は呪力を沢山持っているということですか？」
「……せやな。サクサは保有できる呪力の量が他人より随分多い。それをケモノに吸わせる用途に使えるっちゅーわけや」
「じゃあ、他の用途があるんですか」
　角名の質問には、胡坐をかいた侑が答えた。

「呪力っちゅーモンを自在に操れる人間は、主に呪術師の奴等やねん。あいつらは自分の呪力を術式に通して呪術を使う。せやけど、サクサは術式なんぞ持ってへんやろ」

　ジュツシキとやらが何かはまだイマイチ分かっていないが、要は私には技が無いので有り余って持て余している呪力の用途はケモノである二匹に吸わせる以外に無いという事だろう。
　あってるよね？

「侑の言う通りや。せやけどその呪力にはサクサ自身の生命力も混じっとるからな、吸われ過ぎると死ぬ」
「……命混ぜてる呪力だから、吸われ過ぎるとしんどいし死ぬってことですよね」
「せやな」

　溜息を吐くと、治を挟んで隣に座った角名が少々憐れむような視線を寄越して「ケモノ憑きって大変だな」と呟く。
　その通りだね、と私は肩を落としたのであった。


【酷い目に遭う】

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