01【稲荷崎神社】 ページ3
家の近所の神社は、山間にあった。
兵庫でも割かし田舎と思わしき我が祖母の家の、その家の裏山に鎮座する真っ赤な鳥居の先の神社。幼い頃は怖くてひとりでは行けなかったけど、従兄弟が一緒ならなんとか。って感じで。
だから、あんまり高校生になっても一人では行きたくなかった。
「お願い!Aにしか頼まれひん!縁結びのお守り買うてきて!なんて!」
……でも、中学からの友達の頼みを無下にできる程、確固たる意志があるわけでも無かったのだ。
好きな先輩と結ばれたいから縁結びのお守りを買いたいけれど、自分が選んだら緊張して学業成就を買っちゃいそう、だなんてちょっと変わった友達のお願いに渋々頷いてしまった私。あぁ、馬鹿だ。
―――佐久早A、高校二年生女子。
今、私は家の裏山の神社の鳥居をくぐったところです。
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それにしても、と言うか、流石、と言うべきか。私有地では無いにしても、少し分け入りにくい場所にある山だからか人気は全く無い。寧ろ平日なのににぎわっている山とかあったらちょっと怖いかもだけど。
「えーっと、石の鳥居の向こうの石段が見えたら、その先は赤い鳥居で、神社の境内。だったな」
木々が高く生い茂っているせいで、まだ夕方と言うべき時間でも無いのに薄暗い。枯葉がところどころ邪魔する石畳を踏んで、石の鳥居を潜った。
祖母が言う事には、この神社はお稲荷様を祀っているのだそうで。
つまり、狐ってことらしい。
えーっと、確か『二匹の気性の荒い人喰い狐を従えた、稲荷神直々の御使い様がこの地に居を構え、人々の暮らしに力を貸してくれた』なんてファンタジーな話がある。なんだかぼやーっとした伝承だけど、なかなか面白い。
特に『二匹の気性の荒い人喰い狐』ってとことか。どんな狐だよ、と突っ込みたくなるのは関西かぶれ故の事だろうけど。私は関東出身なので、一応ね。
そんなとりとめもない事を考えながら、長い長い石段を上がり切った先には見覚えのある真っ赤な鳥居と、朱塗りの本殿が『ででん!』と建っていた。
そう、これこそが『稲荷崎神社』である。
何を隠そう、私は小学生の頃から数えて約七年ぶり。
七年ぶりの訪問なのだ。
少しばかりわくわくする気持ちがあってもおかしくない、そう、おかしくないもん。
【稲荷崎神社】
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藤浪(プロフ) - merisuさん» 初めまして!とても面白いだなんて……ありがとうございます!ぼちぼち書いていきますので、どうぞのんびり更新をお待ちください……! (2021年8月20日 20時) (レス) id: a6c7f148a0 (このIDを非表示/違反報告)
バボ - はじめまして!!一気読みしました!!いやぁ、侑君と治君めちゃくちゃかっこいいし、可愛いですね!とても面白かったです!!続き待ってます。頑張ってください! (2021年8月19日 22時) (レス) id: f5aeefa10b (このIDを非表示/違反報告)
merisu(プロフ) - はじめまして。とても面白い作品をありがとうございます!!続きを楽しみに待っています(^^)更新頑張ってください!! (2021年8月19日 19時) (レス) id: bbb64c35b8 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - mioさん» はじめまして!嬉しいお言葉、ありがとうございます。もふもふいいですよね、もふもふ……。聖臣くんを書くのもとても楽しみなので、のんびりご覧いただければ幸いです!! (2021年8月8日 6時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 初めまして。とても面白かったです!もふもふ触りたい……。聖臣くん登場するのも楽しみにしております (2021年8月6日 20時) (レス) id: e44c41366c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤浪 | 作成日時:2021年4月28日 22時