10【ふさふさ】 ページ12
「あんなぁ、サクサ」
金髪の少年が、ちょこんと私の膝の上に座った。もふもふした尻尾に手が伸びそうになるのを我慢して、ニマニマ笑う顔を見下ろす。
「俺ら、尻尾のふさふさな狐さんやねん」
「……狐なのは分かったけど」
「ほんでな、銀と金でめっちゃ縁起ええねん」
「う、うん」
よじよじとこちらも登ってきた銀髪の少年は、いーっ、と歯を見せる。鋭い犬歯があって、獣のような感じさえする。と言うか、確か北さんが言うところによれば狐なので獣なんだろう。多分。メルヘンチック過ぎるけど。
「俺らと契約したら、サクサはめっちゃ強なれんねん。昨日みたいなバケモンが出てきても俺らが倒したる」
「金銀セットで今ならサクサの命ひとつ!」
「サクサを助けて、眷属としての格が上がれば俺らも晴れて自由の身!」
な、ウィンウィンやで!
俺らと契約しよや!
見事にハモった二人の声。私は無視してなんたらメイトを齧る。
実は昨日、北さんに言われていたのだ。
『もし、あの双子に「契約」だの「縛り」だの言われても無視せなあかんで。見た目はちんまくてフワフワで可愛くても、アレに魅入られたらサクサの人生狂ってまうからな』
その意味を深くは理解していないけど、この二匹が普通の少年じゃないことは分かる。
霊感とか無いし、この二匹は幽霊じゃないとは思うけど。
すると金髪の方が、むーっ、と頬を膨らませて私を睨んだ。
「こざかしいやっちゃなー!」
「いやだって、君の名前知らないもん」
「えー、さっきから言いよるやん。俺が……」
私の頬をむいむいと引っ張りながら、金髪の方がその名を名乗ろうとした瞬間である。
ウヴゥオォオォオオォオ……
ウゥウウォオゥオウオオォ……
どこからともなく、低い唸りのような気味の悪い音が響いた。
ゾワゾワと悪寒が走る。そんな私の膝の上で銀の方がピクンと耳を震わせた。
「西の結界に引っ掛かっとるんや!」
膝の上からひょいと飛び降りた金の方がダッと走り出す。私もその後を追うために立ち上がる。何者か分からないけど見た目は子供だし、放っては置けない。
それに、北さん不在の今ここに残るのもちょっと怖い。
「待って!」
とてつもなくびんびん嫌な感じだが、私は銀髪の方を小脇に抱えて走り出した。
「サクサ、あっちや!」
「はいはい!」
今日に限ってローファーを履いてきてしまったのは少し、運が悪かったのかもしれない。
【ふさふさ】
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藤浪(プロフ) - merisuさん» 初めまして!とても面白いだなんて……ありがとうございます!ぼちぼち書いていきますので、どうぞのんびり更新をお待ちください……! (2021年8月20日 20時) (レス) id: a6c7f148a0 (このIDを非表示/違反報告)
バボ - はじめまして!!一気読みしました!!いやぁ、侑君と治君めちゃくちゃかっこいいし、可愛いですね!とても面白かったです!!続き待ってます。頑張ってください! (2021年8月19日 22時) (レス) id: f5aeefa10b (このIDを非表示/違反報告)
merisu(プロフ) - はじめまして。とても面白い作品をありがとうございます!!続きを楽しみに待っています(^^)更新頑張ってください!! (2021年8月19日 19時) (レス) id: bbb64c35b8 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - mioさん» はじめまして!嬉しいお言葉、ありがとうございます。もふもふいいですよね、もふもふ……。聖臣くんを書くのもとても楽しみなので、のんびりご覧いただければ幸いです!! (2021年8月8日 6時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 初めまして。とても面白かったです!もふもふ触りたい……。聖臣くん登場するのも楽しみにしております (2021年8月6日 20時) (レス) id: e44c41366c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤浪 | 作成日時:2021年4月28日 22時