09【つままれる】 ページ11
「狐につままれる」という言葉がある。
要は狐に化かされるというわけで、想定外の事が起こってポカンとする、みたいな意味があるとか。
いまいちピン、と来ない言葉だと思っていたのはきっと、狐という生物が私の人生から程遠い場所にいたからなのだ。だって、登下校の途中に狐を目撃することだって無かったし、動物園に狐がいる話なんてあんまり聞いた事無いし。本州に在住していてもホンドギツネの一匹たりとも見たことが無いこの十数年の人生。
「なぁなぁサクサ!それ何?」
「油揚げちゃうやん!うまいん?」
午後三時、稲荷崎神社の社務所縁側にて。
二匹(二人)の狐耳の少年が私の膝に乗り上げてわちゃわちゃと騒いでいるのであった。
〇
北さんが「遅うなったらばぁちゃんが心配するやろ、ほな帰ろうか」なんて言って、私がこの二匹の狐について問おうとしたのを有無を言わさぬ勢いで磨り潰したのが昨晩七時半。
あんな事があったものだから、北さんは私を麓まで送ってくれた。やっぱり顔がいいんだよなぁ、と面食いな事を考えつつ家に辿り着いたのは八時を回った頃。
そして帰宅後、私はある事に気が付いた。
部活用のスポーツバックの一番上。行きつけのスーパーのレジ袋。中身はなんと、今日渡すはずだった油揚げ。
「……こういうのって、ちゃんと渡さないとマズイやつだよね……」
故に翌日の授業後、部活オフで友達と遊びに行きたい気持ちはやまやまだったが、スーパーに寄って新しい油揚げを購入した。昨日のやつは朝ごはんの味噌汁に入れてやったが美味しかった。また買いたい……じゃなくって。
で、なんだかんだと昼間の山は怖く無いぞ!と自分に言い聞かせながらやって来た稲荷崎神社の縁側で、今私は少年二人に膝を突っつかれているのであった。まだ夢なんじゃ無いかな、と思っていたり。いなかったり。
「……二人は、昨日助けてくれた狐だよね……?」
袴姿の二匹はひょこひょこ耳を動かしながら、私の手元の某なんちゃらメイトをつつこうとする。
部活用にストックしてた奴を、北さん不在のためボケーッとかじっていたらこれだ。
「おん!」
「なんか、小さくない?」
「北さんに絞められたんや!お陰でしばらくガキの見た目のままやで。不便やわぁ……」
絞めたら、小さくなる……?
怪訝そうな顔をしていたら金髪の方が膝によじ登って、にまーっと笑いかけてきた。
……あ、嫌な予感。
【つままれる】
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藤浪(プロフ) - merisuさん» 初めまして!とても面白いだなんて……ありがとうございます!ぼちぼち書いていきますので、どうぞのんびり更新をお待ちください……! (2021年8月20日 20時) (レス) id: a6c7f148a0 (このIDを非表示/違反報告)
バボ - はじめまして!!一気読みしました!!いやぁ、侑君と治君めちゃくちゃかっこいいし、可愛いですね!とても面白かったです!!続き待ってます。頑張ってください! (2021年8月19日 22時) (レス) id: f5aeefa10b (このIDを非表示/違反報告)
merisu(プロフ) - はじめまして。とても面白い作品をありがとうございます!!続きを楽しみに待っています(^^)更新頑張ってください!! (2021年8月19日 19時) (レス) id: bbb64c35b8 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - mioさん» はじめまして!嬉しいお言葉、ありがとうございます。もふもふいいですよね、もふもふ……。聖臣くんを書くのもとても楽しみなので、のんびりご覧いただければ幸いです!! (2021年8月8日 6時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 初めまして。とても面白かったです!もふもふ触りたい……。聖臣くん登場するのも楽しみにしております (2021年8月6日 20時) (レス) id: e44c41366c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤浪 | 作成日時:2021年4月28日 22時