【鬼滅の刃】兄様、兄上、お助けくださいっ！！【継国兄弟】

しがらみの中は＊巌勝side ページ38

「先程の話はどこへ行った」

接触禁止については、Aには告げない事で一致した筈だ。手短に労いの言葉をかけ、我々は今すぐにでも立ち去らねばならぬというのに。

「俺はものを渡したら直ぐに退きます。その時に少し、二人で話がしたいだけだ」

そういうお前が今、何を取りに行ったのかは知っている。Aの日輪刀であろう。
折れているが、護身用にとでも言い訳するつもりか？

「……了承出来ぬな」

「………なら、構いませぬ。A、これを」

「私の刀にございますか？ しかし何故……」

戸惑うAが哀れでならぬ。

「何かあった時に使える様、持っておけ」

私は大人しく部屋を出た。勿論、聞き耳は立てさせてもらう。それくらいわかっているだろう。

「……A、いつかお前を殴ったのは、お前の反応を試す為だ。お前があれ程の受け身の取り方が出来ると知っていれば、手を腫らす必要も無かったな」

「何となくは………想像しておりました」

「明日から、お前に目付の者がつく様だ。………それまでに、もう一度来る」

まさかとは思ってはいたが。
此奴、初めから接触禁止の令に、背くつもりだったのだ！

もういい。縁壱が何をしようと、私には関係の無い事だ。
Aの為に腹を斬る事があったとしても、勝手な事ばかりするのなら……私は縁壱を弟だとは思わぬ。

私はさっさとその場から離れた。



………以前はよく、私と縁壱の空気が悪くなってもAが何とかしてくれる、と話題にされていた。

今は逆に、Aこそが諍いのもとになって……いや私達がそうしてしまっている。

「………兄上、申し訳ございませんでした」

背後から音も立てずに近付いていたのか。
わざとではなかったとしても、その様な事をする此奴にも、全く気が付かなかった自分自身にも腹が立つ。

私は振り返り、静かに言った。

「俺はもう、お前と兄弟として関わらぬ。好きにしろ」

縁壱は何も言わなかった。

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