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兄弟 ページ36

中に入った瞬間、縁壱が駆け寄って来た。

「兄上ッ!!」

周囲の者達が一斉にこちらを見て、ピリッとしたような、ほっとしたような……複雑な表情になった。

縁壱は顔を上げずにいる。

何が何だかさっぱり判らない。
炎の呼吸の剣士が困惑して言った。

「何があったのだ……?」

私達はふと横たわっている負傷者に目を向けた。
治療にあたっている者達は、どこか切羽詰まりかけているように見える。

その様子を見て私は、頭を働かせる前に無意識に呟いていた。

「A……………?」

A? ………Aなのか?

静かに横たわるその者に近付くと、ひゅうひゅうと喉を鳴らしているのがわかった。

背後で、縁壱が歯を食いしばりながら、声を絞り出す。

「兄上………申し訳ございまぬ……!!」

ゆっくりと振り返ると、縁壱は顔を上げていた。こうしてきちんと目と目を合わせるのは、久々かもしれない。

仄暗い瞳を潤すのは涙だ。私は黙って縁壱の肩を掴み、そのまま外へと連れ出した。



治療所から少し離れたところに、小さな林がある。

誰も居ないその場所で、久方振りに此奴と二人で話がしたいと思ったのは、他でもないAの事を問い質す為だ。

「……縁壱、一体何があったのだ?」

それまでの出来事を話すが、自分自身がAの元へ着いた時には、既に鬼は居なかったという縁壱。

年甲斐なく流した涙が美しく見えてしまい、思わず私は戸惑った。
こんな感覚は、幼少の頃以来だ。

普段なら憎くて憎くて堪らない相手は、変わらず今も『弟』なのだ。そうか……私は、自分の弟を恨んでいた。
いや、此奴が弟であるからこそ、『兄』として生まれた私の方が劣っている事に、強い怨恨を抱いているのだ。

いつだったか、その事をAに打ち明けた時、私は劣ってはいない、縁壱にはないものを私は持っているのだと……Aは少しだけそう思わせてくれた。

縁壱でさえ、私の事をそういうふうに認識していたのか。

そのお陰で今、私はこうして奴と面と向かって語らう事が出来るのだと思う。

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藤葛(プロフ) - レモンティーさん» ありがとうございます! 自粛開けもちまちまと更新していきますのでこれからもどうぞよろしくお願いします(*^^*) (2020年5月30日 21時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー - この作品大好きです!!なんせ緑壱さんが推しなもので…(´∀`*)更新頑張って下さい!! (2020年5月30日 21時) (レス) id: 0820e3db89 (このIDを非表示/違反報告)
藤葛(プロフ) - 澪さん» わああ……ありがとうございます!めちゃめちゃ嬉しいです!!とても励みになります……頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!! (2020年5月20日 7時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
- すごく好きです継国兄弟…こういう設定のもの大好きです…いいものを見させていただきました…ありがとうございます…!!頑張ってください!応援してます! (2020年5月20日 3時) (レス) id: c921836d0d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤葛 | 作成日時:2020年5月17日 4時

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