奔逸の日 ページ4
兄様方の母……奥方様が身罷られてすぐ、兄上が家を出て行かれた。
そして、兄上が住まわれていたという小さな部屋が、私の新しい寝床となった。
私は、何が起きたのかがわからずにいた。
父上の許可無しに部屋から出る事は許されず、常に目付役の女か乳母が私の側に居た。
親との距離は対して変わらなかったが、部屋に閉じ込められる日々は、再び私の心をひとりぼっちにして私を苦しめ続ける。
やがて父上もその身を罷られ、正式に兄様がお家を継ぐ事が決まり、私が『兄妹』と会える事はなくなったのだと実感した。
ある日の事、母上が初めて私の部屋に訪れた。
顔を忘れかけてしまうほどには長らく会えていなかったので、母上と呼ぶ事に何か違和感を感じる。
記憶を遡ろうとすれど、うんと小さな頃から乳母に任せきりにされていた私には、母上の存在など頭の中に全く無かった。
母上は、こんなに痩せておられたか？
母上は、こんなに底意地の悪そうな顔をしておられたか？
そう考えていると、急に平手打ちを食らった。
母上を必死に止めようとする女達によると、母上は男の子を身篭っているらしい。
母上に何があったのかは知る由もないが、身重の身体で私を痛めつけんとする彼女こそ、私の目にはまるで鬼の様に映った。
もうこれ以上は耐えられない……！
私は隙をついて部屋から外に出て、使いの者達が母上に気を取られているうちに屋敷から逃げ出した。
走って、走って、ひたすら走り続けた。
息が上がり、肺が苦しい。横腹が痛い。
立ち止まって荒い息をする。
気付けば私は、見たことのない景色の中に居た。
両手を広げてみる。私は糸の切れた凧みたいに、自由になれたのだろうか。
兄上の不思議な痣。
兄様の優しい笑顔。
ふたりのことを思い出して、私はひとり、泣いていた。
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藤葛(プロフ) - レモンティーさん» ありがとうございます！ 自粛開けもちまちまと更新していきますのでこれからもどうぞよろしくお願いします(*^^*) (2020年5月30日 21時) (
レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー - この作品大好きです！！なんせ緑壱さんが推しなもので…(´∀`*)更新頑張って下さい！！ (2020年5月30日 21時) (レス) id: 0820e3db89 (このIDを非表示/違反報告)
藤葛(プロフ) - 澪さん» わああ……ありがとうございます！めちゃめちゃ嬉しいです！！とても励みになります……頑張りますのでどうぞよろしくお願いします！！ (2020年5月20日 7時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
澪 - すごく好きです継国兄弟…こういう設定のもの大好きです…いいものを見させていただきました…ありがとうございます…！！頑張ってください！応援してます！ (2020年5月20日 3時) (レス) id: c921836d0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤葛 | 作成日時：2020年5月17日 4時
