証 ページ15
『道を極めた者が辿り着く場所はいつも同じ』
それが、縁壱兄上の持論だった。
どんな時代に生まれ、どんな道を辿っても、必ず同じ場所に辿り着く。
だから、今後継が居なくとも、私達は安心して人生の幕を引けばよい。
……それが、巌勝兄様の静かなる焦燥に対する、答えなのだと。
「………私が慢心しているだけなのやもしれん。
しかし、だからといって今この時に、我々の技を他者に引き継がずに、どう安心すれば良いと言うのだ?
縁壱に見えているものが、かつて私には見えていなかった。
私には、はじめから……奴をそこまで安堵させる程の未来が、幻想が、見える筈もなかったのだ」
兄様の消え入りそうな言葉に、私は思わず声を上げた。
「そんな事はございませぬ!!」
勿論、私にも兄上の仰る未来は想像出来やしない。
けれど私は、兄様が何も残していないとは思わない。
「私を救ってくださったのは、ほかでもない兄様ではございませぬか……!」
「されど……!!」
「兄様に救っていただいた者は、兄様がいなければ続かなかった人生に続きを見出して、日々の恵みに感謝し、鬼でさえも淘汰してしまう程の努力や鍛錬に感動しながら、貴方様に救っていただいた命を決して無駄にしない様……日々を精一杯に生きているのですよ!!」
兄様の曇っていた瞳が、微かに揺れ動いた。
「それが例え兄様の目の届かない所であろうと、兄様が植えた種が芽を出し、根を張り、懸命に花を咲かせているのです……!
一度咲いた花はいずれ必ず散りますが、それを見据えてまた種をつくる………。
それは単なる自然の道理ではございませぬ。兄様が今まで刻んでこられた証が、まさにこの時にも、何処かで芽吹いているのです」
そこまで言い終え、頬に伝った涙を拭い、兄様の瞳を見つめる。
私には、兄様の気持ちが理解出来ていないのかもしれない。それでも、私の気持ちは兄様と共に、兄上と共に、ありたい。
70人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤葛(プロフ) - レモンティーさん» ありがとうございます! 自粛開けもちまちまと更新していきますのでこれからもどうぞよろしくお願いします(*^^*) (2020年5月30日 21時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー - この作品大好きです!!なんせ緑壱さんが推しなもので…(´∀`*)更新頑張って下さい!! (2020年5月30日 21時) (レス) id: 0820e3db89 (このIDを非表示/違反報告)
藤葛(プロフ) - 澪さん» わああ……ありがとうございます!めちゃめちゃ嬉しいです!!とても励みになります……頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!! (2020年5月20日 7時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
澪 - すごく好きです継国兄弟…こういう設定のもの大好きです…いいものを見させていただきました…ありがとうございます…!!頑張ってください!応援してます! (2020年5月20日 3時) (レス) id: c921836d0d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藤葛 | 作成日時:2020年5月17日 4時