惚れた相手の正体は六ツ目の鬼でした【黒死牟】 (ページ8)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:22,186 hit

第八話ページ8

たったあれだけ。たったあれだけの血で、これ程までに酔わされるとは。

体温の上昇と眠気が凄まじく、頭が働かなくなりかけている。
俺の身体を形成している、ありとあらゆる細胞たちの叫び声が聞こえる様だ。

あの血を余してはならぬ、と。

「仕方の無い奴だ。……黒死牟、お前以外の者ならば即座に潰す所だったぞ」

「申し訳ございませぬ………」

流石に、羽目を外してしまったと反省している。
あのお方はその事をよくわかってくださっている為か
やたら私に対して甘かった。

「まぁいい、偶の戯れくらい、どうという事はない。堅物なお前の事だ、せいぜいたっぷりと弄んでやれ」

「は……無惨様にも是非、召し上がっていただきたく存じます」

「ほう、楽しみにしているぞ。
しかし妬けるものだな。黒死牟、そんなにもあの女の血が良かったのか？
ここまでお前を浮き立たせるとは、私の血はそれ以下という事か」

「なっ………」

返す言葉が無い。それもその筈だ、この思考をも全てあのお方に掌握されているのだから。

「……ハハハ、冗談だ。私は、血を少し舐める程度で構わん。他は全てお前にやる」

「しかし………」

「要らんと云っているのだ、何度も云わせるな。
お前を夢中にさせ愉しませている女の血肉など、これっぽっちも唆らぬわ」

私が呆気にとられているうちに、あのお方は何処かへ出かけて行かれた。

夢中に……夢中？女に夢中？！この私がか？

………稀血の血肉とはいえ、傍から観れば女は女。
まさか私が、特定の娘を追い求める日が来るとはな。