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第五話 ページ5

あても無くただ歩き続けていたAと私は、いつの間にやら、街の隅に掛かる橋の上まで来ていた。

今宵は無人で風は無く、辺りは閑散としている。
周りの建物も民家ばかりで、中から見られる心配等も無さそうだ。

橋の半ばまで至った時、私は足を止めた。

少し先を歩いていたAが、直ぐ様それに気付いてこちらへ振り返る。


「……巌勝さん、どうかなさいましたか?」


敢えて、黙って相手の反応を伺う。
Aは表情を変えず、まるで吸い寄せられるかの様に近付いて来た。


さぁ、何う喰べてやろうか。


……一歩、……二歩、……三歩。

細く小さな身体を包み込む。怪我をしていないのに、ふんわりと広がる特有の香り。娘の血の強さが感じて取れた。

少し身を屈めれば、Aの髪がさらりと揺れ、息を呑んだのがわかる。

一度身体を離すと、戸惑う瞳が揺れながら徐々に俺を見上げる。


「巌勝……さん……?」


震える声はか細く、しかし上擦っていた。
この娘、………まさか、俺に好意を抱いたのか?

もしそうなのだとすれば、至極扱いやすい。


けれども俺は、この一瞬で全てを喰べ尽くしてしまうのは勿体無いと思った。

もう少し、自分自身を焦らしてみせよう。
どれ程目の前の誘惑に耐えられるか。

この娘たった一人で、何人分の血肉に値するのだろう。

逸る気持ちを封じ込み、如何にして自然な流れを作るか策を練る。


「………済まない、少し酔ってしまった様だ。
今日はもう家まで送り届けよう。案内してくれるか」


Aの返事は、半分、想定通りだった。


「嫌……あの家に帰らなければならぬと云うのならばもういっそ、貴方に襲われてしまう方がましだ!!」

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- 作者様の前作から来ました!控えめに言って最高です。好き。更新頑張って下さい!応援してます! (2020年11月9日 21時) (レス) id: 41175d901c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤葛 | 作成日時:2020年7月13日 4時

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