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第十九話 ページ19

血を口に含みつつ、優しく愛撫をしてくれる彼は、初めから私を喰べるつもりなど無いのかもしれない。

それなら、この痛みを伴って、貴方の望みに沿わなければならないのか。

それでもいい。私は、貴方に陶酔しきっているから。
家族を殺されてしまったけれど、もう何も思えない。


こんな私を生かしておいて、一体何の得になる?

そう思い、彼を見上げると目が合った。
真ん中の双眸だけを細め、小さな口で舌舐めずりをする。

何気ない仕草が、可愛らしく、色っぽい。
本来恐れるべき存在であるのに、何故か愛おしさばかりが募る。

手を伸ばして頬に触れると、長い睫毛がパチリと瞬きをした。


「黒死牟さま」


私が名前を呼ぶと同時に、彼が私の着ているものを脱がせ始めた。そしてまた口付けをして、私の腰を抱き寄せる。

戸惑いを隠し切れずに問いかけた。


「黒死牟さま、私は……貴方に食べられてしまいたいのです」

「………そう逸るな」

「でも」


露わになった胸に顔を埋め、鋭い歯を食い込ませていく。ちゅう、と吸われていった血は、貴方の役に立てるのだろうか?


「A、お前の血は稀血と言って特別なのだ。
普通の血の人間よりも、遥かに栄養価が高い」

「それは……他の人より、美味しいという事ですか?」

「あぁ………とても美味だ」

「それは嬉しいなぁ」


貴方の他にも、人を喰べる者がいるのだろうか。
だとしたら私は、貴方以外の者に喰べられないよう、賢くしていなければならないな。

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- 作者様の前作から来ました!控えめに言って最高です。好き。更新頑張って下さい!応援してます! (2020年11月9日 21時) (レス) id: 41175d901c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤葛 | 作成日時:2020年7月13日 4時

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