第十七話 ページ17
コロコロコロ……と、何かが床を転がってゆく。
あれは………歯? 私の歯だ……!
兄さんに殴られ、痛い痛いと呻く姉さんは鼻から血を流していた。
私は頬をやられたようで、そこが熱を帯び腫れ上がっているのがわかる。
舌で確かめると、ぽっかりと空いている隙間から血が止めどなく溢れ出ていた。
我が家で一番怒らせてはいけないのが、兄さんだ。
彼は普段おとなしい分、溜め込んだものを爆発させる。
先程まで姉さんに首を絞められていたので、喉がびくついてむせ返る。
その間に近付いていたのか、何かで頭を殴打されても咄嗟に反応できずまともに食らってしまった。
額から、血がまるで汗のように垂れてくる。
私のせい?
私のせいで、家族皆が狂ってしまったの?
父さんも母さんも、兄さんを止めてはくれない。
姉さんにやられた時もそうだった。
結局、私なんて……………あの人の役に立たなければ生まれてきた意味なんて、無いじゃない……!
巌勝さん………。
私、今ね、血を流してるの。
酷い怪我をしてしまったの。だから、沢山の血で床が汚れている。
私には生きている意味も無いから、どんな残酷な事も受け入れてみたいよ……。
『私が名をお前に教えてやろう』
ねぇ……会いたい…………
今はお日様も出ていないでしょう?
私をここから出して、骨も残さず食べ尽くして……!
「……何とも悲惨な」
この声は……!!
顔を上げると、死んだこの目に映ったのは、着物に袴
ひとつに括った長い髪。
六ツ目の鬼……………『黒死牟』が、そこに居た。
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光 - 作者様の前作から来ました!控えめに言って最高です。好き。更新頑張って下さい!応援してます! (2020年11月9日 21時) (レス) id: 41175d901c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤葛 | 作成日時:2020年7月13日 4時