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第十四話 ページ14

「到底、理解できぬな」


そう云いながらも、彼はハンカチを渡してくれた。
その優しさは一体どこから来るのだろうか。

お互いに、よく解らない者同士……ということね。


「A、私は鬼なのだ。………鬼は、日の光を
浴びると消滅してしまう。
私は先に帰るが、せいぜい帰り道は気を付けろよ」

「……はい」


部屋の扉の前で見送ると、どこか切ない微笑みを見せ


「………ではな」


と、頭を撫でてくれた。


貴方以外にこの身体、許す訳にはいかないわ。
だって、この血を全部、この肉を全部……貴方に味わい尽くして欲しいから。

こんなの、とても正気の沙汰じゃない。

でも、それでもいいと思わせてくれるから、貴方じゃなければ駄目なの。


貴方が人間ではないのなら、私は人として扱ってもらえなくていい。
ただの食糧、それでいい。そう思ってた。

なのに、どうして?

愛情ではなくたって、私にとっては慈しみともとれる触れ方をしてくれる。

絶対に、自分を満たすためだけの行動じゃない。
あんなに優しく噛んだって、食べた事にはならない。


『お前は、何を求めている?』


貴方の声、貴方の香り、貴方の視線、
貴方からの痛み。

人ではない存在に、愛とか優しさとかを求める程まで狂ってはいない。


『A、お前は一体……一体何を望んでいるのだ』


貴方に美味しく食べてもらう事。
貴方の血となり肉となり、貴方の望みを叶える為の
糧となる事………!

何故貴方は、今から食わんとする肉塊の本音等を
聞き出そうとしたのですか!?


独り、布に包まりながら……声を上げずに泣いた。

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- 作者様の前作から来ました!控えめに言って最高です。好き。更新頑張って下さい!応援してます! (2020年11月9日 21時) (レス) id: 41175d901c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤葛 | 作成日時:2020年7月13日 4時

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