惚れた相手の正体は六ツ目の鬼でした【黒死牟】 (ページ11)

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第十一話ページ11

力を加えぬ様に細心の注意を払いながら、肩を掴んで身体を離す。

………互いの顔が、見える様に。

掬い上げる様にして、その顔に触れる。
Aは頬を紅く染め、喜びいっぱいの表情で、俺の顔を見上げた。

俺が本性を現した時、此奴はどの様な反応を見せるのだろうか。

「知りたいのか？俺が何者であるのかを」

「はい」

目を見開いて唇を噛み締めているその顔に、堪らなく愛着が湧いた。

そっと口付けを交わす。何度も何度も重ねていく。
次第に舌を絡ませて、息が上がる頃に解放してやる。

「次は噛むぞ」

覚悟を決めたか、稀血の娘は頷いた。

再び唇を吸い合い、軽く歯を立てて舐める。
滲み出てくる血の味は、最早甘く感じる程に美味だ。

足りぬ、足りぬわ。せめてこの前の倍は味わいたい。

Aの舌を誘導して口に含むと、犬歯でぶすりと噛んでやった。
全身がびくりと動く。

じわじわと溢れていく唾液に血が混ざり、それを吸うといやらしい音がした。

二人の舌を繋ぐ糸は紅く、口を離しても中々切れない。

その時、うっすらと目を開けたAが息を呑んだ。
身体を支配しているのは、それまでの高揚感ではなく、恐怖だ。

あぁ………私の擬態が解けたのか。
目を凝らすと、六つの瞼が開いていく感覚が戻った。

瞬きもせずに見つめているAは、心なしか震える瞳を輝かせている。
恐怖ですらも、快感としているかの様な反応だった。