藤ノ花ヲ食ベテ【鬼滅の刃】

・ side 耀哉 ページ38

『あの、今更になってしまうのですが
鬼殺隊へと身を置かせていただいてありがとうございます。いくら感謝してもしきれません』


ああ、この子はまるで人間なのだと


勘違いしてしまいそうになるほどに心が澄んでいて美しい


こんな鬼がいるのかと疑ってしまいそうになる


しかし今目の前にいるこの子は鬼なのだと


見えはしないけれど、感じ取れる何かは確実に鬼のもの


人とは違う


この子が人であった時はさぞ優しい子だったのだろう


鬼になってもなおその優しさを忘れず周囲に向けられるのだから


「…君の居場所を作れたのならば良かったよ」


すぐ近くにあるであろうAの方へと手を向かわせる


指先に触れたサラリとしたもの


さぞ美しい髪なのだろう


労わるように頭を撫でる


するとぴくり、と反応があった


「大丈夫。君がどれほど感謝しているのかは伝わっているからね」

『は、い…』


少し涙ぐんでいる様な声


十四歳だと聞いたけれど、この小さな体にどれだけのものを背負い込んでいるのだろうか


話を聞いた限りでは夜道を歩いていたところを鬼に襲われそうになった


そこに一目見てこの子を気に入った鬼舞辻無惨に共にいた妹を殺され自分は鬼に…


起きた事は一瞬であったかもしれないけれど心に負った傷は数十年分だろう


この歳でそれだけの事があれば、鬼舞辻無惨に似ている私の顔を見ることは辛いと思う


それでも向き合っている


この子の心は傷を負わされても尚強くそこに立ち前を向いている

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