藤ノ花ヲ食ベテ【鬼滅の刃】 (ページ32)

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蝶ノオ屋敷デノ仕事ページ32

その後、無一郎様を殺しに行きそうな皆様をなんとか止めたらしのぶ様を除く皆様はそれぞれ任務の場所へと行ってしまった

私はまた木箱に入って鍵を閉められる

けれど行き程の不安は感じずゆらゆら揺れる木箱の中で意識が朦朧としてくる

そのまま意識を手放して眠りについた

時間としてはそんなに長くないけれど

久しぶりにゆっくりと睡眠をとれた気がする

鬼舞辻無惨に捕えられた時は恐怖で眠れず

珠世様と愈史郎様の隠れ家でもいつかまた捕まってしまうのではという恐怖で眠れず

その後は逃げるために力を使っていて睡眠を取ることはあってもゆっくりとは無理だった

何があっても恐怖が体を支配する

体が恐怖で震えていたから

鬼に睡眠なんて必要ないのかもしれない

けれど眠ると安心する

ほんわりと心が安らいで

まるで幼い時に母が抱きしめてくれていたような安心感を感じられた

ふわりと意識が浮上するとそこには微笑むしのぶ様の美しい顔

途端に恥ずかしくなった

しのぶ様に寝顔を見られてしまった…

「随分安心した顔をしていましたね」

ふふ、と上品な声で笑うしのぶ様

『あ、えと…その…お見苦しいものをお見せしちゃってごめんなさい…』

木箱から出てきてぺこりと頭を下げると優しく撫でられた

「見苦しいなんてとんでもない
とても可愛らしくてついつい見入ってしまいましたよ」

『へ、いや…え…』

「さて、そろそろ通常の大きさに戻りましょうか」

ぽかんと口を開けていると口の中に藤の花をひとつ入れられる

反射的に飲み込んで体を大きくしてからもしばらく放心状態だった

しのぶ様の……はぁとですとろいやぁめ…

好き過ぎて心が爆発しそう…

恋情という訳では無いけれど、それに近しい家族としての好き…

この人を失ったとして私は…立ち直れるのだろうか