陸 ページ7
心地よい温もりに、Aは目を覚ました。
目に映ったのは見しらぬ天井だったが、慌てることなく起き上がった。
「____あ、おにいさん。」
鬼灯と共にどこかへ来たのは覚えている。
けれど鬼灯はこの部屋に居ない。
漢方の独特な匂いがする部屋だ、所々によく分からないものが置いてある。
扉を開ければ鬼灯はいるだろうか、そう考えたAは迷わず扉を開けた____のだが、広がるのは長い長い廊下だった。
「おにいさん……?」
意を決して部屋の外へ進むが、一向に鬼灯の姿は見えない。それが少し寂しく思えて、Aは廊下の端でしゃがみこんでしまった。
「あれ、女の子だ。迷子かな。」
「おい茄子、いきなり走るなよ。怖がらせるだろ。」
近づいてきた声にAは顔を上げた。
自分より少し大きいくらいの背丈だ。しかしAは二人を見て目を見開いた。
「……つの…ある……?」
「そりゃあ鬼だからね。」
「もしかして亡者か?裁判ならこっちだぞ。」
二人の言葉が理解できなかった。
鬼?亡者?どういう事?
とうとうAは泣き出した。自分の置かれている状況、二人が言う理解できない言葉に頭がいっぱいいっぱいだ。
「あっ、泣いちゃったよ唐瓜〜!どうすればいいの!こういう時!!」
「あああ泣くな泣くな!大丈夫だって!な、な!」
必死に慰める二人だが、Aは泣き止まない。声を上げてはいないものの、小さな嗚咽が漏れている。
「____Aさんを泣かせたのはどちらですか。」
二人___茄子と唐瓜の背後に、禍々しい気配が立ち込める。……鬼灯だ。
二人は顔面蒼白で冷や汗をかきながら必死に弁解した。すると鬼灯は理解したのか、Aの前にしゃがみ込み、Aの頭を撫でた。
「すみません、一人にしてしまって。」
「……おにいさんも、その……鬼、なの?」
「はい、私は鬼です。今まで隠していたことは謝ります。けれどAさんが怖がる事はありませんよ。」
Aを立たせると、鬼灯は茄子と唐瓜に事のあらましをざっくりとだが話した。
二人は即座に理解し、Aに笑顔で宜しく、と手を伸ばした。
怖がっていたAだが、鬼灯が大丈夫と言ったので安堵し二人の手を取った。
「……さて、閻魔大王に挨拶しなければ。」
「…?えんまさま、は怖い人?」
「いいえ全く。威厳も何も無い閻魔ですよ。」
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雪寝子(プロフ) - ボンクラMONKEYさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!ゆっくりとした更新ですがどうぞ今後ともお付き合いくださいませ! (2023年3月7日 19時) (レス) @page26 id: 8c56c9b648 (このIDを非表示/違反報告)
ボンクラMONKEY(プロフ) - めちゃ好きです。この作品に出逢えて良かったです。ありがとうございます。 (2023年3月1日 20時) (レス) @page25 id: 402691cbe4 (このIDを非表示/違反報告)
雪寝子(プロフ) - noche/ノーチェさん» 数ある作品の中から見つけて下さって本当にありがとうございます!評価まで頂き…本当に嬉しい限りです!のんびり書いておりますが、どうぞお付き合い下さい。本当にありがとうございます! (2022年9月26日 22時) (レス) id: 8c56c9b648 (このIDを非表示/違反報告)
noche/ノーチェ(プロフ) - この作品を気づくのが遅くなってしまったことがとても悔しいです。評価を失礼ながら100票目を頂きました。もちろん1番右です!遅いかもしれませんが無理をしない程度に更新を頑張ってください。失礼しました (2022年9月26日 0時) (レス) @page22 id: 958fbd2e0b (このIDを非表示/違反報告)
雪寝子(プロフ) - 暇人(笑)さん» わああ、ありがとうございます!とても励みになります……!更新頑張ります! (2020年9月3日 11時) (レス) id: 6c23cea859 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪寝子 | 作成日時:2020年8月2日 17時