弐拾 ページ21
「あ、ほおずきさま!」
初七日が過ぎた。
Aは初めて見たジェンガを賽の河原で積むのに戸惑いながらも、先に河原にいた子供たちに溶け込み始めていた。
「……こんにちは、Aさん。ちゃんと修行は出来ていますか。」
鬼灯は忙しい仕事の合間を縫ってAに会いに来た。
ほとんどの子供は逃げてしまう中、Aだけが鬼灯を歓迎した。
「たぶんできて、ます!…ここ、楽しいね、ほおずきさま。」
……賽の河原に来てから、Aは鬼灯を「ほおずきさま」と呼ぶようになった。
ほとんどの獄卒がそう呼んでいるのだから、それに順応した。同時に、あまり親しく話しかけてはいけない人なのだ。という理解もした。
一方、鬼灯はそれにあまりいい顔をしなかった。
元々「おにいさん」と呼ばれていた距離から「ほおずきさま」は遠すぎる。
それがほんの少し寂しくもあった。
「あのね、ほおずきさま。わたし、お友達ができたの!」
お友達ができたのは初めてだと言う彼女の頭を鬼灯はそっと撫でた。喜ばしい事だ、生前は他人との関わりがほとんどなかった彼女だ。三途の川にいる間は他人と交流できるいい機会なのだろう。
「めしあくんと、もらるちゃんと…それからね……!」
指を折りながら、この子とはこれで遊んだとか、あの子とは色んな話をしただとか、Aは嬉々として鬼灯に伝えていった。
「Aさん。」
「なあに、ほおずきさま。」
ひと段落着いたところで、鬼灯はAに問いかける。
「数日後、お盆がきますが…Aさんは現世に帰りますか。」
「……かえ、る?」
亡者が現世に里帰りする、盂蘭盆会。
ほとんどの亡者が胡瓜の馬に跨り、現世へ急ぐが……
「……おかあさん…」
Aはどうするだろう、鬼灯は不安だった。母は獄中、家はもぬけの殻。
帰る…帰れる場所がないのだ。もちろんAの為の精霊馬も用意されていない。
「もし、帰らないのであれば…」
鬼灯はAの目線に合うように膝をおった。Aの黒真珠のような瞳を眺めながら、言葉を繋げた。
「一緒に、祭りへ行きましょう。」
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雪寝子(プロフ) - ボンクラMONKEYさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!ゆっくりとした更新ですがどうぞ今後ともお付き合いくださいませ! (2023年3月7日 19時) (レス) @page26 id: 8c56c9b648 (このIDを非表示/違反報告)
ボンクラMONKEY(プロフ) - めちゃ好きです。この作品に出逢えて良かったです。ありがとうございます。 (2023年3月1日 20時) (レス) @page25 id: 402691cbe4 (このIDを非表示/違反報告)
雪寝子(プロフ) - noche/ノーチェさん» 数ある作品の中から見つけて下さって本当にありがとうございます!評価まで頂き…本当に嬉しい限りです!のんびり書いておりますが、どうぞお付き合い下さい。本当にありがとうございます! (2022年9月26日 22時) (レス) id: 8c56c9b648 (このIDを非表示/違反報告)
noche/ノーチェ(プロフ) - この作品を気づくのが遅くなってしまったことがとても悔しいです。評価を失礼ながら100票目を頂きました。もちろん1番右です!遅いかもしれませんが無理をしない程度に更新を頑張ってください。失礼しました (2022年9月26日 0時) (レス) @page22 id: 958fbd2e0b (このIDを非表示/違反報告)
雪寝子(プロフ) - 暇人(笑)さん» わああ、ありがとうございます!とても励みになります……!更新頑張ります! (2020年9月3日 11時) (レス) id: 6c23cea859 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪寝子 | 作成日時:2020年8月2日 17時