on the side(橙)

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フロアミーティングで改めて転入者の紹介があった。

大阪営業部から異動してきた丸山隆平さん。
以前は大学病院のトータルサポート担当していたけど
こちらでは内科系統のクリニック担当で
禁煙外来の設置に力を入れていくらしい。
去年認可が下りた新薬のシェアが上がることを期待されている。


すらすらと澱みなく挨拶をする姿に
さっきのチャラさはなくて
なんとも不思議な人だと思った。






「事務用品はほとんどここに置いてます。梱包資材は複合機の隣のキャビネットにまとめているので、そちらを使ってください。あと、メールボックスはここです。それとー……」


オフィス内の備品の場所やフロアの案内をして

「・・・まぁ、何かあったらその都度聞いてください。」

そう言って自分の仕事に戻る。


今日の午前中で宣伝資材の発注締切だから
頼まれた資材のコード番号を入力しまくる。


どうにか打ち終えて深呼吸すると
ふうわりといい香りがした。



「ミルクとお砂糖は？」


湯気の向こうの丸山さんの問いに
咄嗟に

「ブラックです」

と答えると

「今日発注締日やんなぁ？」

と言いながら手渡されたカップ。


「あ、コーヒー代…」


ロッカーの小銭入れを取りに行こうとする私に

「ええのええの。これからよろしく、のご挨拶やから」


とまた頭をポンポンと撫でられた。


ここは素直にごちそうになることにして
カップに口をつける。


向かいの席に腰を下ろした丸山さんが
同じようにコーヒーをすする。


他の人は大きな荷物を手に
次々と戦場に向かって行く。

その背中にいってらっしゃい、と声をかけて
ほどなく時計の針がてっぺんで重なった。

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