【JH】ふわふわな初恋を君と。 (ページ1)

今日:6 hit、昨日:3 hit、合計:16,898 hit

○ 桜舞う木の下で。ページ1

＿＿＿＿＿＿＿＿＿♩

歩きながら LHRの開始５分前のチャイムを聴く。

"まだLHR残ってんぞ" とぶつぶつ何か言ってるスンチョラに
軽く手を振りながら教室とは反対の方向に進む。

あー、ねむかった。
2年になった俺たちに入学式なんて関係ないのにね。

それに、女子新入生からの居心地の悪い熱視線。
思い出しただけでため息が出てしまう。

何もしてないのに、つかれた。

静かで誰もいない場所を求めてゆるりと歩く。
といっても、行き先は決まっているけどね。

綺麗に咲き誇る桜並木を抜けて校舎の離れにある
校内庭園に辿り着く。

１本の大きな桜の木の下。
そこにあるベンチこそ目的地だったが、先約がいるようだ。

…最悪、お気に入りだったのに。

気づかれて騒がれる前に踵を返そうとすると
心地良い春風が吹きざわざわと桜が音を立てて舞ってくる。

そして、降ってくる桜の隙間から見えた光景に
思わず息を呑む。

ベンチに座ってすやすやと眠っている女の子。
風でふわふわと色素の薄い髪が揺れる。

桜の演出のせいか、ただの疲れのせいか
とても綺麗に見えた。

制服のポケットに花飾りがあることを見ると
新入生なんだろうなと推測できる。

もっと近くで見たい。

何故かそんな欲に駆られて女の子に寄る。

近くにいくと、まだ風で揺れている髪から
甘くやさしい香りがふわっとした。

頭の上に積もった数枚の花びらが
しばらく此処にいたことを物語っていた。

顔を確認しようと覗く。

と同時に、長い睫毛を震わせ薄く目が開き
まだ眠そうではありながらぱっちりとした瞳が
焦点を俺に合わせた。