育手の孫は求婚される２【我妻善逸】

87話 嬉しい ページ42

＊



“ギリギリギリ”




「ウフフフフフ」




“ギリギリギリギリギリギリギリギリ




「大丈夫大丈夫〜」




善逸がマットの上で、きよちゃんたちに体をほぐされている。



炭治郎や、体の柔らかいあの伊之助でさえ痛みで悶絶したのに。



そして湯飲みを使った反射訓練では、





“ぎゅっ





「俺は女の子に お茶をぶっかけたりしないぜ」






アオイさんに見事勝つ。



でも、手の握り方がいやらしい。





『……』






鬼ごっこではアオイさんの体に触れて嬉しそうだった。




めちゃめちゃ嬉しそうだった。



天国かってくらい嬉しそうだった。







「Aちゃん、俺すごいでしょ！頭よしよしして！」




善逸はニマニマしながら道場の隅に座っている私に声をかけた。






『……』


「あ、あれ？」





少し目を細めたら善逸は困惑した。






「Aから少し怒ってる匂いがする」



「そんなの匂い嗅がなくてもわかるわ炭治郎。俺、怒らせるようなことした…？」





善逸は顔を覗き込みながら心配そうな表情を浮かべる。



善逸の隣にいる炭治郎も気にかけてくれているようだ。





少し申し訳ないけれど。





(…最近、私 少し変かも)






善逸が女の子が好きなのはいつものことじゃん。





でも、


そのせいでモヤモヤする。





「Aちゃん、大丈夫…？もしかして体調悪い？しのぶさんに診てもらう？俺 運んで行ってあげるよ」



『……』





そんな顔しないでよ。



ちょっと胸がドクンと熱くなった。








『ありがとう。でも、本当になんでもないから』






私はいつものように、



お爺ちゃんの家で針仕事をして、



鍛錬から帰ってきてボロボロのアイツを迎える時のように、


穏やかに笑ってみせた。








『私のことはいいから、訓練頑張っておいで。カナヲちゃんにも勝ってカッコいいところ見せてよ』


「え〜、仕方ないなぁ！うひひっ！」





顔を赤らめながら体をくねらせる。



少し笑い方が奇妙だ。



やっぱりさっき胸が熱くなったのは気のせいだろう。



私は再び機能回復訓練の見学を続けた。



でも 炭治郎、善逸、伊之助の三人は、柱の継子であるカナヲちゃんに勝利を収めることはできなかった。


ぼろ負けである。

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