育手の孫は求婚される２【我妻善逸】

77話 デキてる ページ32

＊



数日後。



柱合会議の後は色々やることがあった。



自分の屋敷に戻って物を片付けたり、溜まった任務の書類を片付けたり。



二年経った屋敷はそれほどホコリで汚れてはいなかった。



隠の人達がマメに掃除してくれていたらしい。








だから蝶屋敷にいる善逸の見舞いにも行けなくて。







というわけで暇になった今日、私は蝶屋敷に向かって歩いている。




すると、






「あ？Aじゃねぇか」


『…どうも』






奇遇にも宇髄さんとばったり会った。



私が手に持っている見舞いの菓子を見ると「何か用事か？」と、宇髄さんは聞いてくる。





『知人の見舞いに蝶屋敷まで』


「お前に知人なんていたんだな」


『一言余計です』





この人は いつも私に突っかかってくるが、私が柱になった時から何だかんだで仲はいい方だ。



雷の呼吸の派生が宇髄さんの音の呼吸だから波長があうのかなぁ？





「…見舞いねぇ」





宇髄さんはジロジロと私の顔を見てくる。


すると私の耳をそっと触った。




『ひっ…！』




くすぐったい指の感触に つい声を漏らしてしまう。






「耳飾り…、着飾ることに興味ないお前が自分で買ったとは思えねぇから、誰かに貰ったもんだろ？」





あっ、当たりだ。


すごいなこの人。



宇髄さんはちょっと驚いた顔でこっちを見てきた。






「もしかして、お前 ついにできたか？」


『なにがですか？』


「男だよ、男。お前も そういう年頃だろ」




男…？





この耳飾りは善逸に貰ったし、



今から善逸の見舞いに行くし、


…男？男か






『はい、男です』





頭をかきながら言った。





「……は？」


『え？』




なぜか めちゃくちゃ低い声で「は？」って言われたんだけれど。




「どんな奴だ」




「歳上か？歳下か？階級はどこだ？」と、質問責めしてくる。






『なに勘違いしてるんですか宇髄さん』






あ、もしかして男って恋人ってこと？



違う違う、それは違いますよ。





『男っていうのは私の弟弟子のことですよ』





訂正するように言うと、「へぇ」と納得したような表情を浮かべた。





「ソイツとお前はデキてるってわけか」


『デキてねぇよ…。あっ、デキてないです』






ああ、なんかもう面倒くさくなってきた。



…早く行こう。






『そろそろ行きますね、失礼します』



「あ、おい！」






ぺこりと頭を下げて、私はそそくさと蝶屋敷に向かった。

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