茶-足りない-2 ページ2
「あのね、私、背が高い人が好きなの」
Aの口から紡がれた言葉はあまりにも残酷だった。
どうすることも出来ないことに唖然としてしまう。
「ごめん」
Aの弱々しい声ではっと我に返る。
「ううん。正直に言ってくれてありがとう」
優しいAにこんなことを言わせたのは僕だ。
今傷付いているのは僕だけじゃない。
「ほら、もう着いてるよ」
「あ、うん」
Aは振り返り後部座席の荷物を手に取り始めた。
諦めろ。
頭でそう思っていても、目はどうしもAの一挙一動を追ってしまう。
「じゃあ、ね」
そんな僕を見ることもなくAは背を向けていってしまった。
少し遅れてぱたんと閉まる扉。
車内に1人取り残された僕と、振り返らないA。
出会ってから僕なりに色々頑張ったつもりだった。
自分から連絡先を半ば強制的に聞くなんて人生で初めてだった。
とにかく楽しませようと柄にもなくボケた。
だけど、そんなこと全部無駄だった。
僕に足りないのは、強引さでも、面白さでも、努力でどうにかなる事じゃない”背”だった。
｢好きだったのになぁ…｣
ボソリと呟いたAへの想いを乗せて車は走る。
ぴゅうっと吹く風が涙で湿った頬をそっと撫でた。
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ふつれ(プロフ) - ユキさん» 感想ありがとうございます。とても嬉しいです！投稿頻度は低めですがこれからも頑張ります！ (2021年1月12日 17時) (
レス) id: 789c1d0aac (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 初めまして、コメントさせていただきます。虫さんの視点から描かれる繊細な描写が素敵で思わず切ない気持ちに刺せられました…。素晴らしい作品をご投稿してくださり本当にありがとうございます！ (2021年1月10日 16時) (レス) id: 9dd2a40747 (このIDを非表示/違反報告)
ふつれ(プロフ) - ぽんさん» ごしてきありがとうございます。確認不足でした。すみません。もう一度読み直してきます。 (2021年1月8日 8時) (レス) id: 789c1d0aac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふつれ | 作成日時：2021年1月7日 22時
