72.sha side ページ22
sha side
「そしたら其処でレッドが怪獣をこうっ!
ぶっ飛ばしてみんなを守んねん!めっちゃカッコよくない?!」
気付くと俺は、昨日見た特撮のヒーローものを思い出して興奮が勢い余って身振り手振りで前のめりになって話をしていた。
地元が同じ彼女と俺がそのまま、舞い散る桜のシャワーに包み込まれながら同じく地元にある小学校の門をくぐり抜けてからもう四年が経っとった。
やけど、俺と彼女の関係性は今でも変わらへん。
「あっ、ごめん、いつも俺ばっかり喋ってもーてるよな、、、」
「ううん、はるとくんが楽しそうしてるのが私は嬉しいの!」
そう笑って言ってのけた彼女の笑顔に、俺は見惚れていた。
初めて抱いた感情やった。
でも、俺らが小学五年生になって間もない頃、
_____カノジョは、帰らぬ人となった。
通り魔やった。
その話は信じ難かった。
信じられなかった。
家族ぐるみで仲の良かった俺達は、勿論家族で葬式に参列した。アノ子の母親はハンカチを両手で握り締めながら顔を上げる事無く肩を小刻みに震わしとった。アノ子の事を一番可愛がっとったんは他の誰でもない、アノ子のお母さんやったからな。
「なぁ、なんでだよ」
俺は狭苦しく、硬く冷たいハコに入っているカノジョを見つめた。
「俺っ、お前に言いたかった事っ!!」
給食のトマトを俺の分もこっそり食べてくれて、
俺がかあちゃんに怒られて家出した時も笑顔で匿ってくれて、
一緒に、俺の髪をバカにする奴らと戦ってくれて、
いつも、俺の話を聞いてくれて、
いつも、俺の側に居てくれて、
"ありがとう"
_____日頃の感謝も、
「めっちゃ、あるのに、、、」
"俺は、お前が、お前の事がっ!!"
_____俺の本当の気持ちも、
「何一つ、伝えられてないんやって、、、っ」
大事なもんは失くしてからその重要さに気付くとはよく言うけどさ、、、
_____なら初めから大事って分かってたもんは?
いくらカノジョに聞いたって、当然答えなんか返ってこーへん。
そんなの分かっとるのに、分かっとる筈やったのに、まだまだ子供な俺はカノジョのハコに縋り付き、火がついたように大声で泣き始めた。
俺は高校に上がっても、この髪型だけは、幼い頃から頑なに変えへんかった。
それさえも切ってまうと、アノ子との縁も簡単に切れてしまうような気がして。
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黒翠(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!この作品に出会って下さったということに、感謝の気持ちで胸いっぱいです。お優しいコメントをありがとうございます! (2023年3月14日 0時) (レス) @page40 id: 73723415d9 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - コメント失礼します。この小説面白いです。黒翠さん、素敵な作品をありがとうございます (2023年3月13日 21時) (レス) @page39 id: e066df4934 (このIDを非表示/違反報告)
黒翠(プロフ) - リリィさん» コメントありがとうございます!嬉しい限りです!そのお言葉で更新頑張れますありがとうございます!! (2022年2月22日 0時) (レス) id: 73723415d9 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ - とても面白くて続きが楽しみです! (2022年2月21日 21時) (レス) @page6 id: 74ae9aa626 (このIDを非表示/違反報告)
黒翠(プロフ) - 露助さん» いえいえそんな!いつもコメントありがとうございます!頑張れます〜!(書いてる私自身も思ってます^^;) (2022年2月16日 22時) (レス) id: 73723415d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒翠 | 作成日時:2022年2月8日 0時