明日も君と、恋をしよう

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よく分からない主張に従い
ご馳走になっちゃったけれど




「1日頑張ってよかったわぁ」




当の本人はただヘラヘラと
構わずにご機嫌なままで




「一緒のほうが、美味しいでしょ？」




さらり唐突に詰められる距離で

また浮つく目線が泳ぐ






それに


俺と一緒や、と乗った電車も
嘘かホントか分からない






おまけに駅も同じなんて







「送ろっか」


「ううん、大丈夫」


「えー、つまんないの」






こういうところが疑わしい






「だって駅から自転車だし」





それは残念、と下がる眉は
少しあざとさが滲むけど


可愛い、なんて思ってしまうから
ドアの注意書きに目を逸らす







この人は飲まれたら負けだ








まばらに混み合う改札口


立ち止まった柱の影で
向かい合えばつい足が下がる





離れすぎると邪魔になるから
距離を置くにも限界で






「楽しかった！ありがとね」





真っ直ぐに向けられたその瞳を
受け入れる他にすべはない






「こっちこそありがとう」


「いーえ！」


「……じゃあ、また明日」





バイバイ、と振られた手のひらに
小さく片手を挙げて応えれば



その眼差しが線を引いた





..






自転車を漕いで約5分



コートも脱がずに暖房を付け
とりあえず、お風呂を沸かして

部屋の真ん中でへたり込む







.








やけに肩が張るのは




たぶん




仕事のせいだけじゃないけれど







.




立ち仕事って、大変だ








ぐったり机に突っ伏していれば
ブー、と鈍い音が鳴って

右手の画面に光るのは
岸くんからのメッセージ





”バイトお疲れー！”
”どうだった？”





未だにちょっと気にしてるみたいで
チラ、と覗く変なスタンプ





律儀に気を遣ってくれるのが
申し訳ない気もするけど

そんなところも岸くんらしい





”大丈夫そうだよー”
”疲れたけど楽しかった！”





グーサインのスタンプを送って
トーク画面から戻れば

タイミングよくお風呂が沸く







首まで沈んだお湯の中


後から考えれば巡るほど
上手くホイホイ乗ったみたいで

やっぱり溜息がこぼれる









明日は、

もうちょっと距離を置こう









ふくらはぎの真ん中に
親指を押し当ててみると

顔をしかめずにはいられなくて



大きく吐き出した息と一緒に
ゆっくりと力を強めた

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