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「一緒にって、」


「俺も鍋食べたくなっちゃったし」






でも1人は寂しいし?、と
続いた言葉を聞きながら


止まった思考を叩いてみても
動く気配はみえなくて








「ダメ?」


「や、ダメっていうか…」









この程度の誘い文句なんて
挨拶がわりに違いない







そう自分に言い聞かせたところで

一旦速度を上げた鼓動は
簡単には戻らないのに






「あ、さすがに押しかけへんよ?」






この辺いっぱいお店ありそうやし、と
おどけた眼に覗かれるから





またどくりと大きく跳ねる









本気とジョークの境目が


戸惑いと揺らぎの違いが







わからないから

厄介で









渦巻きはじめた頭の中で
あっさり終止符を打つのは







「お願いしまーす」






運び込まれた仕事の山








「うげ」


「……結構あるね」







時計を見れば19時過ぎ





思い出したように耳を澄ませば

お昼頃ほどではないものの
騒めきが拡がりをみせて







「いいなぁ、俺も早よ食べたい」







勢いよく捻られた蛇口が
水を飛ばしたその腕を


追いそうになる視線を戻して






スポンジをくしゃり滑らせる







..









「おつかれー」


「お疲れー」








なんとか終わった1日目





すっかり支度を終えた平野くんは

脱いだエプロンをくるくると
両手に絡めて放心中







「持ってこうか?」


「んー…?あぁ、うん!お願い」







2枚のエプロンを片して戻れば

ふあぁ、と聞こえる大あくび





ぎゅうぅと線を描いた瞼は
開けば涙を滲ませて






「あ、ありがと」





水気を残したままの瞳に
眠たげにお礼を告げられる






そのまま壁へともたれた彼は

スマホを弄りはじめるから








どうやらなんにも起こらなそうだと
気が緩みかけたその瞬間







「わっ、」







視界に割り込んだ肩の厚みが

目線の行き場を持ち上げて









「美味しそうなお店、見つけちゃったけど」








勝手に人の不意をついたくせに
当の本人は知らぬ顔








「どーする?行く?」









こうなったら




もう







「……行こう、かな」








お手上げだ

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ふとん(プロフ) - はるかさん» はるかさん、ありがとうございます!ようやく折り返しと言えるところまできました…最後まで頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです! (2017年9月21日 23時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ここにきてこんなに切ない展開ってさすがです…続きがすごく気になります!! (2017年9月20日 2時) (レス) id: 66715550c8 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん(プロフ) - つかささん» つかささん、ありがとうございます!最後まで自分の思い描いた世界を表現できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2017年8月31日 9時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - この作品を読んでいるとすごく不思議な感覚になります。更新楽しみにしてます。 (2017年8月28日 10時) (レス) id: ad87999c23 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 紫耀ちゃんが、いつ出てくるか楽しみです! (2016年12月19日 8時) (レス) id: a7ce410caa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふとん | 作成日時:2016年12月18日 21時

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