明日も君と、恋をしよう

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”記憶 1日 消える”





うつ伏せたベッドにため息

現れ出る画面を流しては
ひとつひとつ中身を探って









また溜息









あり得ない、ことじゃないらしい









”前向性健忘症”









見慣れない漢字の羅列に
凝らす目がじくりと乾いて

瞑る隙に睡魔が霞む








怪我とか薬とか、ストレスとか

何かしらが原因になって
そこから先の記憶が保たずに




新しく何かを覚えることが

できなくなる記憶障害






あのドラマの探偵さんも
この症状の1種、らしい









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ねぇ

紫耀くんもおんなじ？









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もしも今日だけの世界なら

何を思っているんだろう









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やけに名前で呼ばれたがるのは

ゆっくり距離を寄せるだけの
時間が残されてないから









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お金を気前良く費うのは

明日に持ち越したところで
今の紫耀くんには意味がないから









.









夜には番号を消すのは

次にかかってきた時には
その相手を覚えてないから









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…………なのかも、しれない









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紫耀くんがそれを望んだのか


そうせざるを得なかったのか








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また

分からないことが増えた









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そういえば紫耀くんって
ひとり暮らし、なんだろうか



勝手にそうだと思ってたけど

1日で消える記憶なら
ひとりは無理がある気がする







ひとり暮らしかどうかくらいなら
聞いてみても大丈夫かな


聞くだけ

聞いてみても、いいか









はぐらかされながらでも





ちゃんと





紫耀くんを知りたい







まぁ

答えがくるかは分からないけど






もう、それはそれでいいや








あれを聞こう、これを聞こう、って
どれだけ用意していたって

紫耀くんに飲まれたらおしまい









あっけなく


私の負け









紫耀くんと一緒に話してると

聞きたかったことが言えなくても
交わす言葉だけ舞い込んで



ひたすらその瞬間だけに
全てがもう、いっぱいになる









頭にあったはずのことも

動こうとした唇の形も









気づかないうちに吹き飛ばされて

素直な声だけ吸い込まれて







だけど

それが心地良くて









惚れた弱みってやつなのか



それとも



紫耀くんがそうさせてるのか









……まぁいいや







結局

敵いそうにはない

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