明日も君と、恋をしよう

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.



1回、2回、と鳴るコール








この電話にさえ出てくれれば

それだけで





全部

変わるから









4回、









変えるから









5回、








お願い、とこぼれた声に
6回目のコールが応えて









7回目が

容赦なく鳴る









この隙にと小銭入れを開けて
100円玉を握り締めて

バカみたいだと思うけれど
身体は意外と自分勝手だ









……8回、









ガチャリと落ちていく硬貨に
頭だけが深く溜息





あぁ、もう

なにやってんだか








指から消えた100円玉に
今さら惜しさを感じれば






.







「もしもーし、」





.







それは


すぐに吹き消される








「こんばんは、」

「こんばんはー」








これで、変わるかもしれない







「話し相手、してほしくて」

「ん、ええよ。ちょーどヒマやってん」






この間とおんなじように
世間話でもできればいいんだ






「バイトも上がったとこでさ」

「あ。パン屋さんの、」






勢いに任せきったまま
するりと口に出してみれば






「え？……あぁっ、お客さんかぁ！」

「メロンパン、ごちそうさまでした」






あ、と含まれる笑い声






「あれや、メロンパン買ってくれんかった子や」

「や、それは」

「せっかく俺がおすすめしたのにー」





結局私が買ったのは
クロワッサンと塩パンで





「でも、塩パンだって」









詰まる息


早る鼓動









だけど

私は知ってるから









「紫耀くんが、おすすめするから」









その名を呼ばずに

いられない








「や、ちゃうやん！だってそれはさぁ？」







特に聞こえない動揺に
こっそり吸い込んで吐く息

肩すかしに落っこちたその息は
喉に詰まる空気も押し出して






「紫耀くんは、さ。塩パンとメロンパン、どっちが好き？」

「えー？」






んー、としばらく唸る声






「メロンパン！」








しっかり返ってきた声に
それだけでドクリ脈打って








「メロンパンのが大っきいからさ、お腹溜まるやん」

「そういう、」

「や、大事やで？腹持ち大事」

「男の子だね」

「男の子やもん」







あざとく丸められた声で

わかりやすく緩んだ頬が
瞳を細く線にさせる








「Aちゃんは？」

「んー、……え？」

「ん？」

「名前、」









たしかに、聞いた









だって


Aちゃん、って









「んー？あぁ、」









呼ばれた

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