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「かんぱーい」
「カンパーイ」
ごく普通の緩いデニムに
変哲のない白いTシャツと
大きめな、グレーのパーカー
「んー、んまい」
正面に座る彼の姿に
変わったところなんてないのに
完全に捕らわれた視線
私って、
こんな分かりやすかったっけ
「紫耀さ、前からあそこで働いてたの？」
ビールを手にした岸くんが
それを傾けて尋ねれば
「旨いっしょ、あそこの味噌ラーメン」
焼き鳥を咥えた紫耀くんは
あっち、と目元に線を寄せて
冷えたビールに手を伸ばす
「やっぱあそこは味噌だよなぁ」
「ほんと美味しかった」
「ははっ、それはどーも」
ジョッキへと口付けた唇は
泡をオマケに離されて
拭うように擦り合わされるから
「Aちゃんも完食だったもんね。優太が勝手に頼んじゃったのに」
急に右から飛んできた声に
相槌も
ろくに打てなくて
「すごく、美味しかったんで」
掠れた声しか出さない喉に
手元のサワーを流し込む
浅い鼓動も舌先も
お酒のせいだと言い聞かせれば
なんとか誤魔化せる、ような
「思ったよりあっさりしてて。野菜美味しかったですよね」
「ね！私、あの染み込んでる感じが好きなの」
また行きたいなぁ、とこぼす志保さんに
うんうん、と頷いてみたり
「志保が好きでさ、味噌ラーメン。それで一緒に食い行ったの」
看板メニューなんやもんなぁ、と
呟いてみせた紫耀くんは
「でも大将な？チャーハン作んのが1番楽しいんやって」
ことりテーブルに置いたジョッキを
両手ですっぽり包み込む
「え、ラーメンじゃねーの？」
「な！俺も聞いたの。ラーメンじゃないんですか、って」
ジョッキの口をなぞる親指は
どうにも
視線を逸らさせて
「そしたらさ？作るのも食べるのも、チャーハンが1番好きなんやって」
「え、じゃあなんで味噌ラーメンが看板メニューなの？チャーハンでよくね？」
瞬いた岸くんの向かいで
志保さんがコクコクと頷けば
すっかり回りの遅れた思考が
たしかに、とようやく追いつく
「大将の奥さんが味噌ラーメン大好きなんやって。で、そのまま看板メニュー」
「え、そんだけで？」
「そ。そんだけで」
マジかよ、と頭に手を乗っけて
少し背を逸らした岸くんが
「愛ってすげーな」
大真面目な顔で呟くから
紫耀くんも、志保さんも、私も、
グラスで口元を隠した
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ふとん(プロフ) - はるかさん» はるかさん、ありがとうございます！ようやく折り返しと言えるところまできました…最後まで頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです！ (2017年9月21日 23時) (
レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ここにきてこんなに切ない展開ってさすがです…続きがすごく気になります！！ (2017年9月20日 2時) (レス) id: 66715550c8 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん(プロフ) - つかささん» つかささん、ありがとうございます！最後まで自分の思い描いた世界を表現できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2017年8月31日 9時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - この作品を読んでいるとすごく不思議な感覚になります。更新楽しみにしてます。 (2017年8月28日 10時) (レス) id: ad87999c23 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 紫耀ちゃんが、いつ出てくるか楽しみです！ (2016年12月19日 8時) (レス) id: a7ce410caa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふとん
| 作成日時：2016年12月18日 21時
