明日も君と、恋をしよう【after】

8 ページ8

.






先に食べ切ったのをいいことに

コーヒーなんか追加しちゃって
大人っぽさを纏ってみるけど






「食べないん？」

「や、食べ終わっちゃうのもったいなくて」

「じゃあ俺が食べちゃおっか」

「だめだめだめ、食べます食べます」






あっさりフォークを持つAちゃんは
やっぱりパンケーキに夢中やし

あんま関係なかったかも






「こないだ岸くんと飲み行ったんだけどさ。あ、あの電話した時」

「あぁ、公衆電話で？」

「そそそそ、あの日あの日」






かたりフォークが置かれたあと

両手で上げられたカップに
緩みかけたのをどうにか堪えれば






「岸くんさぁ、惚気がもうすごいの」






へぇ、って離れてこぼす口に
パチリ瞬かせてみせてから






「岸くんたちが付き合った時の話、聞いたことある？」

「え、ないない」






聞きたい、なんてその眼を細めて
にんまり引っ込めた唇






ひょっとして上手くいっちゃえば
Aちゃんのタイプも分かるかもなんて

ちゃっかり狙ってはいるけど






「教えたげよっか」






ダシに使っちゃうみたいで
ちょっぴり悪い気はするから

岸くんごめんねー、って
一応頭で謝っとく






「うん、聞きたい」

「じゃあさ、」






ま、幸せのおすそ分けってことで

ふたりも許してくれるはず






「どっちから告ったか知ってる？」

「えー……。やっぱり岸くん？」






遮る瞼が2回パチリ


にやり引き上げた唇から
Aちゃんも気付いたみたいで






「え、うそ。志保さんから？」





瞬きに弾んだ瞳が
勢いのままにおっきくクルリ






「ファイナルアンサー？」

「えぇ？んー……、ファイナルアンサー」






焦らせばちょっぴり揺れるから
ワザとらしく吸い上げた息のあとで






「大正解！志保さんからでしたー」






ひと思いに答えてみれば
眉毛まで押し上げる瞼




やっぱちょっとびっくりだよね






「えぇぇ、意外！意外すぎる」

「俺もびっくりした。岸くんからだと思ってたし」

「思ってた思ってた。えー、びっくり」






志保さんからかぁ、って吐き出して
もたれちゃったその身体は

放る視線を泳がせて
俺の置いたカップに落とす

9→←7

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す