明日も君と、恋をしよう【after】

2 ページ2

.






あまりにあっさり放たれた声に

おっきく吐き出す溜息は
その肩をすくめさせるだけ





「そんな簡単に言わないでよ」

「焦らされるこっちの身にもなれって」

「なんで岸くんが焦らされんの」





ちょうどやってきた手羽先に
やつあたりに噛み付けば





「あっつ！」

「だろうな」





じわり滲んだ目の先で
今度は岸くんが溜息


おしぼりで擦る指先は
その甲斐なくジリジリ火照る





「好きなんだろ？Aのこと」

「なんかイヤやわ、その言い方」

「今そこつっこむ？」

「あー。俺、悪酔いしてる」





なんか面倒なヤツになってるけど
自覚があるだけ多分マシ

だと思いたい





「うん。好き」

「うん。知ってる」





しつこく溜息が出てくるから
ついた頬杖へと乗っかれば

岸くんはまた枝豆を頼んで





「絶対Aも好きじゃん？」

「なにを」

「紫耀を」





１つ残ってた唐揚げを
下のレタスごと放り込む





「そりゃ、……そう思いたいけどさ」

「好きじゃなきゃあんなことできないって」

「そんなんわからんし」






たぶんやけど、Aちゃんは




ちょっと前までの俺が
見ようとしなかった明日とか

忘れようとしてた昨日とか





そうやって続く毎日を


全部大事にしなきゃ、って
ずっと受け入れてきたタイプで








でもきっと





ちょっと、それに疲れてた









そんなAちゃんやったから









俺を放っておけなくて



なんなら

1日きりにしてた俺の毎日を
どこかで気付いて羨んでて





だから





好きとか優しさとかじゃなくて
同属嫌悪、みたいな

そんくらいのスタンスで




引っ張り出してくれたんかなって

そう思ってたりもする








や、嫌悪ではないと思うけど


思いたいけど








「分かってるとは思うけどさ、」






わりと黙りこくってたらしい俺に
岸くんはチラリ目を上げて





「でも一応言っとくけどさ？」





赤いくせに生真面目なカオ





「Aとか俺らが必死こいてたの、なんつーか、同情とかそういうんじゃねぇから」





まぁ分かってると思うけど、って
2回目の念押しをされて






「うん、」






あぁ、また逃げてたんやなって
イスにもたれそうになるけど

耐えた腰を起こし直す

3→←1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す