まくらのはなし【プチ短編集】 (ページ7)

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狭めた瞼と同時に
夢の残りが抜け落ちて

どアップのぽかり開いた口

ほんと、

よく寝てるなぁ

いつからかは分かんないけど
紫耀くんの腕が下敷きで

もう痺れちゃってそうなのに

しっかり脚に咥えられるから
どうにも動けそうになくて

「おはよー？」

やけに近い耳に聞いても
返事代わりの寝息だけ

スマホに手を伸ばせもしない

昨日、遅かったのかな

とりあえず眼を閉じてみれば
やっぱり心地は良いわけで

もぞり取り出して伸ばす手を
背まで回して触れてみる

もったいなくて開いた目は

ちょっと持ち上げてみた先で
鼻筋越しの睫毛を映して

突っつきたくなっちゃうけどなぁ

でも起こしちゃ可哀想だし
そのくらいじゃ起きない気もするし

これはなんとも迷いどこ

.

絶対、腕痺れてるよね？

それでも睡魔が勝ったんだよね？

……いいや、触っちゃお

ちょっとだけ肩を起こしたら
横向きの姿勢へとチェンジ

見やすくなった近い寝顔に

なんか

釘付けられちゃって

やっと取り出した指先で

高い鼻先をひとつつき

そのままおでこへと向かって

肌の上をなぞってみたり
背にした指で瞼に触れたり

起きない朝を堪能してみる

『んぅ、』

「あ、」

『んんんー』

器用に片腕で伸びをして
またがっちり巻き込んでから

ようやくちょっぴり開いた眼が

『おはよ』

「おはよう」

ふにゃり親指を伸ばさせて
擦っては撫でてくる目尻

「痺れてないの？」

『んー？』

「腕」

『腕。……あ、』

試しに押してみたところで
うぇ、なんて声が潰れて

「大丈夫、？」

『じゃない』

もぞもぞ頭を外して
元の枕を見つけたとこで

途中でもがき出す紫耀くん

『そっちだめ』

「痺れてるでしょ？」

『痺れてるけど』

動かないらしい片腕は
手のひらを握っては開けて

バタつかせる足と振る頭に
鼻筋は線まで刻んで

とにかく、朝から大変だ

なのに離れちゃダメなんて
そんなの聞けるわけないのに

『ね、だめって言ったんだけど？』

「だって」

『だってじゃないの』

意外と早い復活で
また滑り込んできた腕に

しっかり引き寄せられちゃって

黙ったまんまの

見つめ合い

『ふふ、』

「起きる？」

『もおちょっと』

頭へ乗っけられた顎に
しょうがないなぁ、って返した