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もう寝ちゃいたい瞼を
なんとか抑え込む洗面所で
歯ブラシを行き来させてれば
「ねぇねぇねぇ、」
にょきり鏡に写り込んで
ぼんやり眠たげな眼の紫耀
「もうおわる?」
あいにく喋れる口じゃないから
コクコクリ頷いてみれば
真似っこで頭を振って
ふらりその背が廊下に戻る
…ほんと眠そう
先に寝ちゃってもいいのに
律儀に待っててくれるから
あぐらのまま寝落ちもあって
今も危うそうだったし
その前に滑り込まなきゃだから
ちゃっちゃと支度を済ませる
「ごめんね、お待たせしました」
「や。俺こそ、おまたせ」
「え?」
謎な返しに固まって
もぞり屈んだその背中を
分からないまま目が追えば
「1週間、」
振り返った紫耀の腕には
何故かイルカの抱き枕
「おまたせしました」
「えっと、」
「はい、あげる」
むぎゅり託されたイルカは
つぶらにきゅるり見つめてきて
「かわいい、」
その口先をつついてみる
「でしょ?」
「うん、ありがとう」
「てことで、」
「あ、」
紫耀のあぐらに収まるのは
まさに
1週間振りのサメ
「コイツはおれがちょーだいします」
いい?、なんて聞いてくるけど
すでにごろりサメを抱えてて
どう見たって決定事項
「そのサメ、気に入ったの?」
「Aはイルカきにいった?」
「うん、今日から使うー」
向かい合わせに寝転んで
抱えたイルカにくっつけば
むにゅり当たる頬が気持ちくて
「んー」
「んーふふ、ねむそうだねぇ」
「紫耀のが眠そうだよ」
サメに抱きついた紫耀は
ふにゃり細めた目の端っこを
歯を見せるサメの顔へと埋めて
「んんんー、」
ぐりぐり顎を擦り付けながら
ふやけた口元が鳴くから
わんこ感がもう5割増し
「ふふ、」
「んー?」
ぱちり
見てきたその目が
「Aがなんで笑ったかわかるよ?」
柔いでた唇の端を
片っぽだけ
引き上げてきて
「でもさぁ、」
眠気は鳴りを潜めたのか
肘を立てて起きた身体が
ベッドを沈めてにじり寄る
「かわいいのはAだよね」
まだ飛びきらない眠気に
近づく紫耀へ
イルカを向ければ
するり腕から取り上げられて
悪戯っ子な瞳が覗いた
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作者名:ふとん | 作成日時:2019年3月14日 18時