ふたつのいと

1-29 走馬燈と、文句 ページ29

1-29 走馬燈と、文句


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ブワッと、ゾワッと、思い出したくない、封印したはずの出会いが走馬燈のように頭の中で広がる。




2012年、4月。


春だというのにジメジメと、雨が。



行きつけだったBARで、いきなり切り出された、別れ話。


『分かった。』


それだけ言って、BARを飛び出し、そのビルの非常階段に駆け込んだ。


結婚するもんだと思ってた彼に、

｢ごめん、好きな人が出来た。｣

そう言われ、逃げ出した。



非常階段の一番上、屋上に繋がる扉を開けると、


フェンスにもたれ掛かり、真っ暗な空を見る男の人がいた。


溢れ出す涙を止めることが出来ないし、
戻るわけにもいかない。


そのまま、そのフェンス前にいる人と、反対側に。

私は、その人を背に、堪えきれなくなった涙と嗚咽を吐き出した。



めちゃくちゃな鳴き声に、


｢なんだよ、邪魔すんな｣


って。



その声にびっくりして、涙が止まった。


『ふぇ？、』みたいな変な声まで出た。


｢んだよ。だから女ってめんどくせー。｣


『っだっ！誰ですかっ』


ズーズーと鼻水を啜り、ぐちゃぐちゃの顔に声で聞いた。


｢誰でもいいだろ。｣


｢振られた？そんな感じ？｣



『関係ないやろ』


｢おー関西弁。｣


『ほっといて』



｢こっちの人間じゃないんだ｣



『は？なんなん？文句ある？』

涙が止まったけど、いきなり声をかけられた男にイライラした。

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